声優の声を無断学習した生成AI、「事案によって違反になる」 山田議員が経産省の見解引き出す

2025年4月2日、日本国内で深刻化する生成AIによる“声の無断学習”問題について、山田太郎参議院議員が経済産業省から「事案によっては不正競争防止法(不競法)違反となる」との見解を引き出したと明かした。
声優の「声」も保護対象へ 経産省が不正競争防止法による対応可能性を認める
声優の声を模倣するAIが急速に発展しているが、多くのAI企業や開発者は、声優本人の許可を得ずに音声データを学習させている状況だ。
これに対し、声優業界は「職業としての声優が成り立たなくなる」と強い懸念を表明している。2024年には「NOMORE無断生成AI」と題された有志の団体が発足し、声優や歌手、俳優などの関係者も参加しており、無断利用をやめるよう広く呼びかけている。
この問題について山田議員は、2024年4月の決算委員会の質疑で、不競法での対応を検討するよう経産省に求めていた。
その後2025年3月25日、「第28回 産業構造審議会 知的財産分科会 不正競争防止小委員会」で不競法における肖像や声の取り扱いが整理。それを踏まえ、経産省が山田議員に対し今回の見解を示したという。
経産省は声優や俳優の「声」が不正競争防止法における「商品等表示」に該当する可能性を認めた。これは、特定の人物が提供する商品やサービスの“識別力”として機能する「表示」のひとつとされ、無断使用は法的に問題となる場合がある。
経産省が示した具体例としては、「生成AIで作成した肖像写真の販売」および「広告での使用」、「AIで生成した声による歌唱動画の投稿」、さらに「生成音声を用いた目覚まし時計の販売」などが挙げられた。
また、同省は、AIによる音声の生成が「既存の著作物の二次利用」に該当するかどうかは、個々の事例ごとに判断されるべきだとしている。この見解は、今後の裁判例やガイドラインの策定に影響を与えることが予想される。
山田議員は、同法に罰則規定が存在することを踏まえ、現行法での対応を徹底すべきだと指摘。さらに、今後も技術が進化する中で「必要に応じて法改正も検討すべき」との意向を示した。
今後の展望
短期的には、経済産業省が提示した4つの具体的事例をベースに、声優の声を無断で利用する生成AIの商用利用に対して一定の歯止めがかかる可能性がある。関係者の法的リテラシーが向上し、一定の抑制効果が期待されるだろう。
中長期的には、現行法の運用だけでは限界があるとの認識が広がり、新たな法整備や制度設計の必要性が高まっていくと考えられる。例えば、声を含む「人格的表現」に対する新たな権利概念の導入や、AIが生成した音声の透明性を担保するためのトレーサビリティ制度などが検討対象になる可能性がある。
また、クリエイター側の自主的なルール作りや、プラットフォームによる利用規約の強化といった、民間ベースの取り組みも進展していくだろう。
AI技術の発展と倫理のバランスをどう保つかという課題は、法的整備と社会的合意形成の両輪で対応する必要がある。声という極めて個人的な表現手段を巡る議論は、今後さらに社会的注目を集めることになりそうだ。