デンソーITLABと東京科学大、AI×制御技術の共同研究講座を新設 次世代モビリティの中核技術創出へ

2025年4月1日、デンソーグループ先端基礎研究企業のデンソーアイティーラボラトリ(DENSO ITLAB)は東京科学大学情報理工学院と連携し、「DENSO IT LAB認識・制御・学習アルゴリズム共同研究講座」を新たに開設する。
自動運転から循環経済まで AIと制御工学の融合が導く革新
講座は、デンソーITLABと東京科学大学情報理工学院が、2020年4月1日から2025年3月31日までに行った「認識・学習アルゴリズム共同研究講座」の成果を引き継ぎ、AIによる認識・学習技術と制御技術を融合させた新たな技術創出を目的とする。
重点分野には、自動運転、ロボティクス、スマートファクトリー、循環経済(サーキュラーエコノミー)、MaaS(Mobility as a Service)など、実社会への応用が期待される領域が含まれる。
講座責任者である佐藤育郎氏(東京科学大学情報理工学院特任教授/デンソーITLABプリンシパルリサーチャー)は、「今後はAIの知見を活かして、ものづくりメーカーとして動くものを作成・設計することが目標」と語る。
設計から実装まで一貫した技術開発体制を整えることで、産業へのスムーズな技術移転が可能になると見込まれている。
※MaaS(Mobility as a Service)とは、電車やバス、タクシーなど複数の交通手段を一体化し、スマートフォンなどでシームレスに利用できるようにする次世代交通サービスの概念である。
今後の展望
今回の講座開設により、AIと制御工学の高次統合が一段と進むことが見込まれる。
自動車業界では現在、知能化・電動化の波が加速しており、車両そのものが単なる「移動手段」から「自律的に判断し、動作する存在」へと進化しつつある。その中核を担うのが、高度な認識技術と精緻な制御技術の融合にほかならない。
デンソーITLABの産業現場で培われた応用技術と、東京科学大学が有するアカデミックな研究知見とが交差することで、実用性と理論の両輪を備えた技術開発が進む可能性がある。
また、教育面における波及効果も大きい。
本講座を通じて、学生や若手研究者が実社会に近いテーマに触れる機会を得られる点は、次世代の技術者育成という観点からも意義深い。
単なる知識伝達にとどまらず、実装までを視野に入れた体験型の学びは、即戦力人材の育成につながると考えられる。
本講座の開設により、AIによる判断と物理的な制御の一体化が加速することが予想される。
従来は別々に扱われがちだった「認識」と「動作」が、連携して最適化されることで、自動運転車の走行精度やロボットの協調作業能力は飛躍的に向上する可能性がある。
今後、研究成果がどのように社会に実装されていくかに注目が集まる。