兵庫県朝来市、AI活用のオンデマンド交通「あさGO」始動 住民の移動を変える新たな一歩

兵庫県朝来市は2025年4月1日、AIが予約状況に応じて最適な運行ルートを作成する新たな乗り合い交通サービス「あさGO」の運行を開始した。
対象エリアは和田山と山東地域で、地域交通の課題解決と住民の利便性向上が期待されている。
AIが即時に最適ルートを作成、時刻表も路線もない新交通システムの実力
高齢化と公共交通の縮小という全国的な課題に直面する中、朝来市は交通の新たな選択肢として、オンデマンド型のAI交通「あさGO」の導入に踏み切った。
従来のバス路線と異なり、定時運行ではなく、利用者の予約情報に基づいてAIがリアルタイムでルートを編成する。
この柔軟な運行方式は、空車走行や無駄な待ち時間の削減につながり、効率的な地域交通を実現する構えだ。
サービス対象は和田山と山東の2エリアを中心に朝来市全域とされ、病院や商業施設など312カ所の乗降地点が設けられており、移動のハードルを下げる工夫が随所に見られる。
運行には5台の専用車両が使用され、1時間ごとに稼働する。
予約は電話かインターネットで受け付けられており、高齢者にも配慮したアナログな窓口が残されている点も評価できる。
料金は中学生以上が400円、65歳以上は200円とし、一般的な路線バスと同等かそれ以下に抑えられている。
デジタル技術が地域社会を変える可能性と、今後の改善に向けた課題
「あさGO」は、都市部に先行して導入されてきたMaaS(Mobility as a Service ※)に近いモデルを地方に応用した先進的な試みといえる。
特に、固定ルートのバスではカバーしきれなかった場所へのアクセス向上は、住民の日常生活に大きな影響を与えるだろう。
医療機関への通院や日用品の買い物といった基本的な移動ニーズをAIがカバーすることにより、移動制約が生活の質に直結する高齢者層のQOL(Quality of Life)向上に寄与することが期待される。
一方で、運用面ではいくつかの課題も想定される。
まず、AIがリアルタイムで最適ルートを編成するとはいえ、乗車予約の集中時間帯には待機時間が発生する可能性がある。
また、デジタル機器に不慣れな高齢者への操作支援など、地域全体のデジタルリテラシー向上も求められるだろう。
今後は、実証期間を経てサービスエリアや車両数を拡大する可能性がある。
交通空白地帯の解消やCO₂排出量の削減にもつながる可能性を持つこの取り組みは、朝来市を皮切りに、他の地方自治体にも波及していくのではないだろうか。
※MaaS(Mobility as a Service):公共交通やシェアリングサービスなど複数の移動手段を統合し、利用者に最適な移動手段を提供するサービス概念。スマートフォンなどで一括予約・決済が可能な点が特徴。
朝来市デマンド型乗合交通「あさGO」ホームページ:
https://www.city.asago.hyogo.jp/site/demandkotsu/