国内企業、生成AIの導入率45% DXの進展と課題

2025年3月14日、日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)とアイ・ティ・アール(ITR)は、国内企業1110社を対象に実施した「企業IT利活用動向調査2025」の結果を発表した。企業のIT活用が進む一方で、リスクや課題も明確になっている。
80%の企業が「生成AIは日常業務に効果が出る」と実感
調査結果によれば、国内企業の45%が生成AIを導入している。
全社的に利用が推奨されている企業は15.9%、特定部門に限定されている企業は29.1%にのぼる。
また、日常業務において80%以上の企業が生成AIの効果を実感しており、特に「非常に効果が出ている」と回答した企業は45.2%だった。
一方で、リスクを意識する声も多い結果となった。機密情報の漏えいに関しては59.9%、ハルシネーション(※)は59.1%の企業が懸念を抱いている。
また、倫理的問題などについての課題も認識されている。
ITRはこれらに対して、適切な利用ルールの策定や従業員教育、AIの管理・監視が必要であると指摘している。
DXに関しては、内向きのDX(社内業務のデジタル化)では52.1%の企業が成果を実感している。
しかし、外向きのDX(顧客向けの新サービス創出)では、顧客体験のデジタル化が30.9%、データに基づいた営業・マーケティングの高度化が29.4%と、内向きのDXに比べ進捗が遅れている。
※ハルシネーション:AIが事実に基づかない情報を生成する現象。誤った情報が出力されるリスクがある。
ルールを徹底することが最大の活用につながる
企業のIT活用が進展している点は、日本の産業競争力強化にとって大きな前進である。
生成AIの導入率が45%に達し、その多くが業務の効率化や生産性向上に寄与していることは、企業活動の質的向上を示している。
特に、DXが内向きのDXにおいては一定の成果を上げていることは、企業のデジタル基盤の整備が進んでいる証拠だ。
企業のAI活用は今後も加速すると予想できる。
ただし、リスク管理が不十分だと、情報漏えいやハルシネーションによる誤情報の影響が拡大する可能性があるため、引き続き注意する必要がある。今後、企業は生成AIの利用ルールを明確化し、従業員教育を強化することでリスクを最小限に抑えることが求められる。
DXについては、今後の成長の鍵は「外向きのDX」の推進にある。
社内業務の効率化はある程度進んでいるため、今後は顧客体験の向上や新規ビジネスモデルの創出に焦点が移ると考えられる。
総じて、企業のIT活用は新たな段階に入りつつある。
生成AIやDXの進展がビジネスに与える影響は大きく、それを最大限活用するためには、戦略的なアプローチが欠かせない。
企業が今後の競争環境を勝ち抜くためには、技術導入のみに頼るのではなく、リスク管理とともに、組織全体のデジタル変革を推進することが不可欠となるだろう。
ITR プレスリリース