大阪公立大学、船の自動運転に向けた技術を開発 AIの判断理由を人間が理解可能に

3月12日、大阪公立大学大学院の研究グループは、AIを活用した自動避航システムの新技術を発表した。この技術は、AIが選択した航路の判断根拠を人間に説明できることを特徴とする。従来のシステムでは、AIの意思決定が不透明であったが、今回の開発により、その理由を明確にすることが可能となった。
AIによる避航判断の透明性を向上
船舶の自動運転技術は近年、物流の効率化や安全性向上の観点から注目を集めている。
AIによる自動避航の判断は従来、不透明であり、どの船を回避するべきか、どのような針路を選択すべきかを説明することができなかった。
大阪公立大学大学院の研究グループは、この課題を解決するため、AIが選択する航路の判断根拠を可視化するシステムを開発した。
このシステムでは、まずAIが航行区域内に存在するすべての船舶に対し、衝突危険度を数値化する。これに基づき、どの船舶を優先的に回避すべきかを判断し、その決定に至った根拠を明示する仕組みを構築した。
さらに、AIが提案した回避行動が危険度をどの程度低減するかを数値で示すことで、航路選択の妥当性を説明できるようになった。
従来の自動避航システム(※)では、AIの判断プロセスがブラックボックス化しており、船長や運航管理者がその選択理由を理解することが難しかった。
しかし、新たな技術により、AIの判断を透明化し、より適切な運航管理を可能にすることが期待される。研究チームは、この技術の導入が船舶の安全性向上に寄与すると考えている。
※自動避航システム:船舶の運航において、他の船舶との衝突を回避するためにAIやセンサーを活用し、自律的に針路を決定する技術。
自動運転技術の実用化に向けた展望
船舶の自動運転には、多くの技術的課題がある。その中でも、他船との衝突を回避するための判断プロセスの透明性は、安全運航の観点から極めて重要だ。
今回の技術開発により、AIがどの船舶を危険と判断し、どのように針路を決定したのかを説明できるようになったことで、自動運転の社会実装に向けた一歩となる。
今後さらなる技術の改良とともに、実際の海上試験を通じたデータ収集が行われる可能性がある。特に、異なる気象条件や船舶の密集度など、さまざまな環境下でのシステムの有効性が検証されれば、実用化への道を探ることができるだろう。
この技術の実用化が進めば、将来的には無人運航船の導入が加速する可能性がある。特に、長距離輸送や夜間運航など、船員の負担が大きい運航において、AIを活用した安全な自動運転が求められている。