中国AIユニコーン企業「StepFun」、シリーズBで数百億円を調達 商用向け基盤モデル開発を加速

2025年3月8日、中国の人工知能(AI)ユニコーン企業である「階躍星辰(StepFun)」が、2024年末にシリーズBラウンドで数億ドル(数百億円)の資金を調達したと報じられた。
この資金は、商用利用を見据えた基盤モデルの開発や推論能力の強化に充てられる予定である。同社は既に大規模言語モデル(LLM)を含む複数の基盤モデルを発表しており、技術力と市場での評価を高めている。
資金調達の詳細と技術開発の進捗
階躍星辰は、2024年末にシリーズBラウンドで数億ドルの資金調達を実施した。主な出資者には、上海国有資本投資有限公司とその関連ファンド、テンセント投資、五源資本、啓明創投などが名を連ねている。
調達した資金は、基盤モデルの開発や推論能力の強化に充てられ、一般ユーザー向けのプロダクトやエコシステムの提供にも活用される予定である。
技術開発の面では、階躍星辰は創業当初からシングルモーダルからマルチモーダル、さらには汎用人工知能(AGI ※)への進化を目指している。
2024年には、1000億パラメータと1兆パラメータの大規模言語モデル(LLM)を含む11の基盤モデルを発表した。特に、1兆パラメータのLLM「Step-2」は、ベンチマーク「LiveBench」で中国製LLMの中でトップのスコアを記録し、技術力の高さが示された。
また、マルチモーダルLLM「Step-1V」も、視覚モデル分野で中国トップの評価を受けている。
※ 汎用人工知能(AGI):人間のような汎用的な知能を持ち、あらゆるタスクを人間と同等にこなすことができるAIのことを指す。
人材と事業戦略による市場での評価と今後の展望
階躍星辰の技術力を支えるのは、優秀な人材である。姜大昕CEOは、米マイクロソフトのサーチ・テクノロジー・センター・アジア(STCA)で副センター長とチーフサイエンティストを務めた経験を持ち、優れた人材を集める能力に長けている。
中心メンバーには、中国バイトダンスの元ディレクターである朱亦博氏や、STCA出身の焦斌星氏、画像認識モデル「ResNet」の開発者の一人である張祥雨氏などが名を連ねており、AIシステムの専門家が揃っている。
事業戦略としては、モデル開発からアプリへの応用に事業の幅を広げ、自社開発とエコシステムパートナーとの協業を組み合わせる形でプロダクト戦略を展開している。自社開発のAIアシスタントアプリ「躍問」や、画像検索機能「拍照問」などがその例である。
また、金融業界向けLLM「Finstep」や個人向け資産管理アシスタント「小財神」を提供するLLM企業「財躍星魚」を経済メディアと共同設立し、スマートフォン大手の栄耀(HONOR)やOPPOともLLM技術で提携している。これらの取り組みにより、階躍星辰は市場での評価を高め、今後の成長が期待される。