太田綜合病院、AIとICTで院内改革を推進 朴栄光氏がアドバイザーに就任

福島県郡山市の太田綜合病院は、医療の質向上を目指し、AIやICT(※)の活用を進めるため、イービーエム社長の朴栄光氏を2025年3月5日にアドバイザーに迎えたことを発表した。
この取り組みは、地域医療の革新に向けた重要な一歩となる。
太田綜合病院、AIとICT導入で医療の質向上を目指す
1895年に創立された太田綜合病院は、130年以上にわたり地域医療を支えてきた。
現在、同院は2つの病院、介護老人保健施設、看護専門学校、保育園などを運営し、地域の多様な医療ニーズに応えている。しかし、少子高齢化と人口減少に伴う労働力不足が深刻化する中、医療現場の効率化と質の向上が求められている。
この課題に対応するため、同院はAIやICTの導入を決定した。
これらの技術は、診療データの分析や業務の自動化を通じて、医療従事者の負担軽減と患者へのサービス向上に寄与することが期待されている。
さらに、この改革を推進するため、医療機器開発の分野で実績を持つイービーエム社長の朴栄光氏がアドバイザーに就任した。
朴氏は2006年にイービーエムを設立し、心臓外科手術訓練用シミュレーター「BEAT」や血管モデル「YOUCAN」など、医療従事者の技術向上を支援する製品を開発してきた。
朴氏は早稲田大学で工学博士号を取得し、米国ピッツバーグ大学医学部心臓外科の客員研究員を務めるなど、国際的な経験も豊富である。
AI導入に際するメリットとデメリット、今後の展望
AIやICTの導入は、医療の質を向上させる大きな可能性を秘めている。
特に、診療データの分析や業務の自動化によって、医療従事者の負担軽減につながる可能性がある。また、診断支援システムや遠隔診療の発展により、専門医が不足する地域でも質の高い医療が提供されるようになるかもしれない。
朴栄光氏のような実績豊富な専門家が関与することで、技術の導入と運用がスムーズに進むことが期待される。
一方で、AIやICTの導入には多額の投資が必要となる。
特に、初期導入コストやシステムの維持費が病院経営に与える影響は無視できない。また、システムが医療現場に適応するまでには時間がかかる上、医療従事者が新たな技術を習得するための教育・研修の負担も生じる。
さらに、AIによる診断支援が進むことで、医師の判断が機械に依存しすぎるリスクも指摘されている。患者の個別性や緊急性に応じた柔軟な対応が求められる医療の現場で、どこまでAIが適切に活用されるのかは慎重に見極める必要がある。
太田綜合病院の事例が成功すれば、他の医療機関にもAIやICT導入の動きが広がる可能性がある。全国的な医療の効率化が進むとともに、労働力不足に悩む医療現場の負担軽減につながるのではないだろうか。
※ICT(情報通信技術)
情報技術と通信技術を組み合わせたもので、データの収集、処理、共有を効率化する。医療現場では電子カルテや遠隔診療などに利用される。