マイクロソフトとオープンAIの提携、CMAが独占懸念を否定し調査終了

2025年3月5日、英国の競争・市場庁(CMA)はマイクロソフトとオープンAIの提携に関する調査を終了すると発表した。
同庁は、マイクロソフトがオープンAIに対して「高度な実質的影響力」を持つものの、事実上の支配権には至らないと結論付けた。この結果、両社の提携は継続可能となる見通しである。
調査の経緯とCMAの判断
CMAは2023年12月、マイクロソフトのオープンAIに対する影響力が競争環境に悪影響を及ぼす可能性があるとして調査を開始した。特に、同年11月にオープンAIのCEOサム・アルトマン氏が一時解任され、その後マイクロソフトの関与を経て再任されたことが、支配権の強化を示すものではないかと指摘されていた。
しかし、CMAの調査の結果、マイクロソフトの影響力は一定の範囲にとどまり、法的に「支配権を持つ」とは言えないとの判断に至った。その根拠として、マイクロソフトはオープンAIに多額の投資を行い技術協力関係を持っているものの、取締役会に議決権を持つ席を有しておらず、経営の意思決定に直接関与できない点が挙げられる。
また、オープンAIが他のクラウドプロバイダーとも契約を結び、Azure以外の選択肢を確保したことも、マイクロソフトの影響力を制限する要因とみなされた。
CMAは、こうした状況を総合的に考慮し、マイクロソフトが市場競争を不当に歪めるレベルの支配権を有していないと結論づけた。
この決定を受け、マイクロソフトは「今後もオープンAIとの協力を通じて、革新的なAI技術を推進していく」とコメントした。
オープンAIも「引き続きAI開発を加速させる」との意向を示している。
業界への影響と今後の展望
今後、両社の提携が継続することで、AI技術の進展がさらに加速することが期待される。特に、マイクロソフトのクラウドサービス「Azure」とオープンAIの人工知能モデルとの連携は、業界全体における競争力を高める可能性が高いと見られている。
また、CMAが「支配権なし」と判断したことで、他のAI企業に対する不当な競争圧力が抑制され、市場の多様性が保たれる点も評価できる。これにより、競争を重視する業界関係者や規制当局からは歓迎されるだろう。
一方で、マイクロソフトがオープンAIに多額の投資を行い、技術面でも密接に関与し続ける以上、影響力が完全に排除されたわけではない。取締役会に議決権を持たないとはいえ、資金提供と技術支援を通じて意思決定に間接的な影響を与えられる余地は残されている。
また、今回の判断が前例となり、大手テクノロジー企業が他のAIスタートアップと同様の提携を結ぶことへのハードルが下がる恐れもある。結果として、資本力のある企業がAI分野で影響力を強め、市場支配が進行するリスクが高まると考えられる。
最終的に、AI市場の健全な競争環境を維持するためには、企業側の自主的な透明性確保と、規制当局の適切な監視が欠かせない。
今後の動向次第では、CMAの判断が再び問われる場面も出てくるだろう。