中国、AI主導を加速 政府活動報告で国家戦略を強調

2025年3月5日、中国の全国人民代表大会(全人代)で発表された政府活動報告において、「高度な科学技術による自立と強化」を推進する方針が示された。
特に人工知能(AI)の活用を一層促進し、経済成長と産業競争力の向上を目指す姿勢が強調されている。
AI活用を推進する背景と政策
中国政府は、AI技術を国家戦略の重要な柱と位置づけ技術自立を強化し、国内産業の発展を加速させる狙いを持つ。これは、米国をはじめとする先進国との競争が激化する中で、革新的技術の主導権を確保するための取り組みでもある。
特に、製造業におけるスマートファクトリー化やサービス業の自動化、さらに医療や行政分野におけるデータ活用を促進し、生産性向上や業務の効率化を図る方針だ。
また、政府活動報告では、大型AIモデルの活用促進や次世代スマート端末、製造設備の開発推進についても明言された。特に、インテリジェントネットワークを備えた新エネルギー車や、AI搭載のスマートフォン、コンピュータ、ロボットの開発が加速すると予測され、デジタル技術と製造業のさらなる統合が期待されている。
さらに、バイオ製造、量子技術、エンボディドAI(※)、第6世代移動通信システム(6G)といった「未来の産業」の育成にも注力する方針が示されており、次世代技術の発展に向けた取り組みが加速する見通しだ。
今後の展望と国際競争の行方
今後、中国はAI分野での技術的自立を一層推し進め、独自のエコシステムを構築する可能性が高い。国内の拠点を活用しながら、産業界と連携を深めることで、より実用的なAIソリューションが生まれるだろう。
特に、製造業や公共分野では、短期間で成果が表れることが予想される。
国際的な技術交流に関しては、中国政府がどの程度開放的な姿勢を示すかが重要なポイントになる。欧州や東南アジアとの連携が進めば、技術の共有が活発化し、グローバルな影響力を高めることができるだろう。
一方で、米国との競争が激化すれば、AI技術のブロック化が進み、世界の技術発展に影響を与える可能性もある。
また、規制の動向も今後の展開に大きく関わる。データセキュリティやプライバシー保護が適切に整備されれば、企業や個人の信頼を獲得し、AI技術の普及が加速するだろう。
しかし、過度な統制が行われれば、企業活動の自由度が下がり、逆にイノベーションの妨げとなるリスクもある。
総じて、中国のAI戦略は今後の世界経済や技術発展に大きな影響を及ぼす可能性が高い。その方向性次第で、グローバルなAI市場のバランスが変化することになるだろう。
※エンボディドAI(Embodied AI):物理的な体を持ち、環境と相互作用しながら学習や認識を行うAI技術。これにより、AIは単なるデータ処理を超えて、実際の物理的な世界で経験を積み、動作を通じて理解を深めることができる。