LG U+、AI音声詐欺対策の「アンチ・ディープボイス」技術を展示 95%超の識別率を実現

韓国の通信大手LG U+が開発した「アンチ・ディープボイス」技術が、AIによる偽造音声と人間の声を95%以上の精度で識別することに成功した。スペイン、バルセロナで2025年3日から6日まで開催されているモバイル関連の展示会、「MWC」でこの技術が展示された。近年増加するディープフェイク音声詐欺対策として、期待を集めている。
ディープフェイク詐欺急増に対抗
ディープフェイク技術の進化に伴い、他人の声を模倣してボイスフィッシング(※)を行う詐欺事件が世界中で急増している。こうした犯罪手法は被害者に精神的苦痛と経済的損失をもたらすため、効果的な対策が求められている。
韓国の通信大手LG U+はこの社会問題に対応するため、AIを活用した「アンチ・ディープボイス」技術の開発に着手。この技術は音声を分析し、人間が発した本物の声なのか、AIが生成した偽の声なのかを高精度で判別する機能を持つ。
特に技術的に優れているのは、合成音声に特有の周波数ノイズを検出するシステムだ。AIによって作られた音声には、人間の自然な声には存在しない特徴的なパターンが含まれており、同社のシステムはこれを瞬時に検知する仕組みとなっている。
現在の識別率は95%を超えており、今後さらなる精度向上が見込まれるとのことだ。
※ボイスフィッシング:電話を使って相手を騙し、個人情報やパスワード、クレジットカード情報などを不正に入手する詐欺手法。近年はAI技術を用いて親族や上司の声を模倣するケースが増加している。
警告システムの実装でリアルタイム詐欺防止、今後はさらなる普及が課題に
このシステムの特徴的な機能として、リアルタイム警告システムが挙げられる。機械音声が検出されると赤いランプが点灯し、利用者に注意を促す。これにより、通話中に相手の声が偽物だと気づくことができ、個人情報の漏洩や金銭被害を未然に防止できると考えられる。
展示中の「アンチ・ディープボイス」は、実際の体験者からは高い評価を得ているという。一方、同社の関係者は「技術の精度向上だけでなく、一般ユーザーが日常的に利用できる形での実装が次の課題だ」と、今後の課題を述べた。
「アンチ・ディープボイス」のような技術が、最終的にユーザーの手にどう届くかは、各社のサービス設計に依存すると言える。今後この技術が公益性の高い形でユーザーに届けられるのかどうかは、慎重に推移を見定める必要があるだろう。
AIの進化は便利さをもたらす一方で、新たな犯罪手法を生み出すリスクも内包している。このような「アンチ・ディープボイス」技術の発展は、テクノロジーの悪用に対する防御策としての意義を持っている。
今後は韓国だけでなく世界各国での同様の技術開発が加速することに期待がかかる。