長野県上伊那にAI活用の「アスパラガス集出荷貯蔵施設」が完成

2025年3月4日、長野県南箕輪村神子柴にて、JA上伊那が新たに整備した「上伊那アスパラガス集出荷貯蔵施設」の竣工式が行われた。
この施設は、全国で初めて人工知能(AI)を用いた自動選別装置を導入した共同選荷施設であり、生産者の負担軽減と品質の均一化を目指している。
本格稼働は2025年4月1日から開始され、生産者の半数程度が利用を予定している。
AI導入による作業効率化と品質向上
上伊那アスパラガス集出荷貯蔵施設は、生産者が個別に行っていた収穫後の選別や結束作業を集約し、効率化を図ることを目的としている。建築面積は349.79平方メートルで、AI画像処理自動選別機1台、計量結束機3台、冷蔵室を備えている。
特に、AI画像処理自動選別機は1時間で3万本のアスパラガスを識別可能であり、計量結束機は1日に3万2400束を生産可能とされている。これにより、荷造りなどにかかる作業時間は全体の約40%を占めており、これを削減することで生産拡大が期待される。
また、AIによる選別により、規格や品質のばらつきを解消することが可能であり、生産者が農作業に集中できる環境が整うと考えられる。
従来の手作業では、サイズや形状のばらつきによる選別基準の違いが生じていたが、AIの導入により統一された基準での選別が可能となる。これにより、消費者に提供されるアスパラガスの品質が安定し、ブランド価値の向上にも寄与することが期待される。
さらに、選別から結束、保管までの一連の流れが施設内で完結するため、流通過程の効率化も進む。これにより、鮮度を保った状態での出荷が可能となり、県内外への供給がよりスムーズになると考えられる。
地域経済への影響と今後の展望
この施設の整備には、約1億3500万円の事業費が投じられ、国の強い農業づくり総合支援金が活用された。JA上伊那では、2033年度にはアスパラガスの販売高10億円を目指しており、この施設の稼働がその達成に向けた重要な一歩となる。また、上伊那地域のアスパラガス生産の拡大が期待され、地域経済の活性化にも寄与する見込みである。
竣工式には、生産者、行政、JA関係者約70人が出席し、施設の完成を祝った。生産者からは、収穫後の選荷作業の負担を軽減し、農作業に集中できる環境を整えることが重要であるとの声が上がっている。
特に、これまで個々の農家で負担していた選別・出荷の労力が削減されることで、新たな生産技術の導入や品質向上に向けた取り組みがしやすくなると期待されている。
また、本格稼働を前に、利用者向けの研修会や設備の操作説明会が開かれる予定だ。これにより、生産者がスムーズに新設備を活用し、より効率的な運営が可能となる。
今後は、利用者の増加とともに、施設のさらなる拡充や技術革新も視野に入れ、地域全体の農業発展につなげていく方針である。
本格稼働は2025年4月1日からで、初めは生産者の半数程度が利用する見込みであるが、順次、利用率が高まることが期待されている。