金融機関の7割が生成AIを活用　業務効率化進むも課題も浮上

2025年3月4日、金融庁は国内の金融機関におけるAIの活用状況に関する調査結果を発表した。今回の調査は、国内の銀行や金融商品取引業者など130社を対象に、2024年10月から11月にかけてアンケート形式で実施された。目的は金融機関におけるAIの導入実態を把握し、今後の活用方針を検討することである。

業務効率化の具体例

調査結果によると、金融機関の約90%が業務にAIを導入しており、そのうち70%が生成AIを活用していることが明らかになった。主な活用領域としては、文章の要約、翻訳、資料作成が挙げられ、特に一般社員の業務効率向上に貢献している。

文章の要約機能は、金融機関内での情報共有を迅速化する目的で導入されている。大量の報告書や市場分析レポートを短時間で要約して関係者に提供することで、意思決定のスピードが向上している。
翻訳機能もグローバルに展開する金融機関にとって欠かせないツールである。英語や中国語などの文書を瞬時に翻訳し、対応スピードの向上に寄与するとともに、競争力の強化にもつながっている。

また、資料作成の分野でも生成AIが活用されており、定型的な報告書やプレゼン資料の作成においてAIがドラフトを作成し、担当者がそれを修正・加筆することで業務の効率化が実現している。

一部の金融機関では、生成AIを活用した顧客対応の自動化も進行中だ。
チャットボットによる顧客サポートや問い合わせメールの自動応答を導入することで、カスタマーサービスの品質を維持しながら業務負担の軽減が図られている。

今後の課題と金融庁の対応

金融機関における生成AIの活用は今後も拡大すると予測される。
特に、より高度なデータ分析やリスク管理の分野でもAIの活用が進む可能性が高い。たとえば、市場動向の予測や不正取引の検知など、現在は専門家が担っている業務の一部がAIによって補助されることが期待される。

一方で、いくつかの課題も浮上している。
特に学習データの質と量の確保は大きな問題であり、不適切なデータを学習させるとAIが誤った情報を生成するリスクが高まる。金融機関で誤情報が業務に影響を及ぼすと、企業の信頼性や顧客資産に重大な影響を与える可能性がある。

加えて、個人情報の取り扱いに関しても慎重な対応が求められる。AIが学習に使用するデータに個人情報や機密情報が含まれる場合、プライバシーを守るために厳格な規制やガイドラインが必要であり、適切なセキュリティ対策とデータガバナンスが不可欠だ。

こうした課題を踏まえ、金融庁は生成AIの活用に関する官民勉強会の設置を決定した。
勉強会では、生成AIの適切な利用方法や、リスク管理のためのガイドライン策定が議論される予定である。

今後は、技術革新とリスク管理のバランスをどのように取るかが、金融機関にとって重要な課題となるだろう。