AIが最適ルートを設定する「おでかけバス」、西和賀町で運行開始

2025年3月3日、岩手県西和賀町でAI技術を活用したオンデマンド交通サービス(※)「おでかけバス」の運行が開始された。
このサービスは、利用者の予約に応じてAIが最適なルートと時刻を設定し、地域の移動手段を革新する試みである。
AIが導く新たな移動手段、「おでかけバス」の特徴と運行方法
「おでかけバス」は、西和賀町が導入したオンデマンド型のバスサービスで、AI技術を駆使して利用者の予約情報に基づき、最適な経路と時刻をリアルタイムで設定する。
これにより、従来の定時定路線型のバスとは異なり、柔軟かつ効率的な運行が可能となる。
運行はマイクロバス2台で行われ、定員は各23人だ。
運行時間は午前10時から11時40分、午後0時20分から2時40分までの2便体制で、利用者のニーズに応じた柔軟な対応が可能である。
利用方法は、スマートフォンの専用アプリや電話での予約が可能で、指定した場所での乗降が実現する。運賃は1回100円で、高校生以下、75歳以上、障がい者等は無料となっており、地域住民の負担軽減が図られている。
「おでかけバス」導入の背景と今後の展望
西和賀町は山間部に位置し、公共交通機関が限られているため、住民の移動手段の確保が課題となっていた。特に高齢者や交通弱者にとって、日常の移動は大きな負担であった。
このような背景の解決策として、町はAI技術を活用したオンデマンド交通サービスの導入を決定した。
今後、「おでかけバス」が地域の移動手段として定着するには、いくつかのポイントが重要になると考えられる。
まず、利用者のデータを蓄積し、それを基にAIのルート最適化精度を向上させることが求められるだろう。運行開始直後は試行錯誤が続くかもしれないが、利用パターンが蓄積されれば、よりスムーズな運行が可能になるだろう。
また、利用者の増加を見越した運行体制の拡充も課題となる。
現状では2台のマイクロバスで対応しているが、需要が高まれば増便や車両の追加が必要になるかもしれない。特に観光シーズンには、地元住民と観光客の双方が快適に利用できるような調整が不可欠だ。
さらに、地域経済への波及効果も注視すべき点である。
移動手段が充実すれば、商店や観光施設へのアクセスが向上し、地域全体の活性化につながる可能性がある。町外からの訪問者が増えることで、地元の経済循環にも好影響を及ぼすだろう。
「おでかけバス」が成功事例として確立されれば、過疎地域や公共交通の不足に悩む他地域でも類似のシステムが広がるかもしれない。
西和賀町における運用が、全国的なモデルケースとしての価値を持つことになるか、今後も目が離せない。
※オンデマンド交通サービス
従来の定時定路線型のバスとは異なり、利用者の予約に応じて運行する交通サービス。AI技術を活用して、最適な経路と時刻をリアルタイムで設定することで、効率的な運行を実現する。