米AI・暗号資産の最高顧問デイヴィッド・O・サックス氏、トランプ政権発足前に保有暗号資産を売却

米国のAIおよび暗号資産分野の最高顧問であるデイヴィッド・O・サックス氏が、トランプ政権発足前に自身の保有する暗号資産を全て売却していたことが、2025年3月3日に明らかになった。この決定は、利益相反（※）の懸念を避けるためと見られている。 

サックス氏の暗号資産売却とその背景

デイヴィッド・O・サックス氏は、ITテック企業への投資家として知られ、ホワイトハウスのAI・暗号資産関連の最高顧問を務めている。

2025年1月23日、トランプ大統領は暗号資産とAIに関する行政措置に署名し、サックス氏はその場に同席した。

この措置により、暗号資産政策に関する作業部会が設置され、米国を暗号資産の中心地とし、AI分野での世界的なリーダーシップを目指す方針が示された。

しかし、サックス氏の投資会社であるクラフト・ベンチャーズが暗号資産関連のスタートアップ企業に出資していることから、利益相反の懸念が浮上していた。
これを受けて、サックス氏はトランプ政権発足前に自身の保有する暗号資産、具体的にはビットコイン（BTC）、イーサリアム（ETH）、ソラナ（SOL）を全て売却したと明らかにした。

売却の背景は、政権内での政策決定において個人的な投資が影響を及ぼすことを避けるための措置と考えられる。 

暗号資産市場と政策への影響

サックス氏の暗号資産売却が、個人の投資判断として市場に直接的な影響を与えたとの報道はない。
むしろ、政府高官が暗号資産を保有し続けることによる利益相反の懸念を払拭するための対応として、市場や政策決定プロセスにおける透明性の確保に寄与したと考えられる。

今後、トランプ政権の暗号資産政策がどのような方向へ進むかが注目される。
現時点では、米国を暗号資産の中心地とする方針が示されており、業界全体にとっては成長の機会となる可能性が高い。
一方で、国際的な規制強化の流れに沿って、適切なルール作りが求められる段階にある。サックス氏の売却が、個人的なリスク管理なのか、それとも今後の政策変更のシグナルなのかは、今後の具体的な施策次第で明確になるだろう。

また、AI分野においても同様に、規制と成長のバランスが問われる。
AIと暗号資産はともに急速に発展する技術領域であり、適切なガイドラインがなければ市場の混乱を招く恐れがある。
サックス氏の動きが、政府関係者の資産管理における新たな基準を示す事例となり、他の政策決定者にも影響を与える可能性がある。

※利益相反
個人や組織が複数の利益を追求する際に、それぞれの利益が互いに対立し、公正な判断や行動が妨げられる状況。