イギリスのアーティストたちがAIによる著作権法改正案に抗議

2025年2月25日、イギリスの著名なアーティストたちが政府のAI関連著作権法改正案に対する懸念を表明し、無音アルバム『Is This What We Want?』をリリースした。
このアルバムはAI企業がアーティストの作品を無断で利用する可能性に対する抗議の象徴である。

著作権法改正案とアーティストの懸念

イギリス政府はAI開発を促進するために、AI企業が著作権者の許可なく作品を利用できるよう著作権法の改正を提案している。
この改正案では、アーティストが自らの作品の使用を拒否する「オプトアウト」（デフォルトで参加となり、参加者が自らの意思で退出を選択する）方式が導入される可能性があるが、これは決して現実的ではなく、アーティストに過度な負担を強いると批判されている。

この提案に対しアンドリュー・ロイド・ウェバー、ケイト・ブッシュ、ポール・マッカートニーなどの著名なアーティストを含む約1,000人が抗議の声を上げた。彼らは政府への公開書簡で「この提案は英国のクリエイティブ産業から大手テクノロジー企業への権利と収入の全面的な譲渡を意味する」と主張している。

抗議活動の一環でリリースされた無音アルバム『Is This What We Want?』は12曲で構成され、各トラックは無音である。
曲名を順に読むと「The British Government Must Not Legalise Music Theft To Benefit AI Companies（英国政府はAI企業の利益のために音楽の盗用を合法化してはならない）」というメッセージが浮かび上がる。

このアルバムにはケイト・ブッシュ、デーモン・アルバーン、アニー・レノックス、ハンス・ジマーなど、多くの著名アーティストが参加している。
彼らはこのアルバムを通じて、AI企業による無断使用が音楽業界に与える潜在的な影響について警鐘を鳴らしているようだ。

業界の反応と今後の展望

主要メディアもこの問題に注目し、全国紙や地域紙が「Make it Fair（公正にしよう）」というキャンペーンを展開している。このキャンペーンは政府の提案が英国のクリエイティブ産業に存在の危機をもたらすと警告し、著作権法の弱体化に反対するものである。

ニュース・メディア協会のCEOであるオーウェン・メレディス氏は「英国の現行の著作権法は、クリエイティブ経済の成長と雇用創出を支えてきた。政府の提案は、コンテンツの盗用を合法化するものであり、クリエイティブ産業の未来を脅かす」と述べている。

政府はAI産業の発展とクリエイティブ産業の権利保護のバランスを取る必要があると主張している。しかしアーティストや業界団体は、提案された改正が実施されれば創作者の権利が侵害されると懸念している。
政府は今後、これらの意見を考慮し、AI開発と著作権保護の両立を図るための適切な法的枠組みを検討することが求められるだろう。