米下院、CLARITY法案を提出 仮想通貨の大半が「商品」扱いに移行か

2025年5月29日、米国の下院議員らがデジタル資産の規制枠組みを見直す「CLARITY法案」を超党派で提出した。仮想通貨の大部分を証券ではなく商品として扱う内容で、監督権限をSECからCFTCに移す方向性が示された。
仮想通貨の分類見直し SECからCFTCへの監督移行も
CLARITY法案は、「21世紀のための金融イノベーション・テクノロジー法案(FIT21)」を引き継ぐ形で提出された。提案の柱は、暗号資産の多くを「デジタルコモディティ(※1)」とみなし、米証券取引委員会(SEC)ではなく、商品先物取引委員会(CFTC)が監督する体制への移行にある。
法案は、「ブロックチェーンシステムに本質的に結びついた」デジタル資産は、システム内での価値移転に用いられるなどの条件を満たす場合、その資産は商品(コモディティ)と見なすべきであると定義した。
この基準は幅広く、ビットコインやイーサリアムなど主要通貨の多くが該当する可能性があると考えられる。
一方で、証券またはそのデリバティブと認定される資産は、引き続きSECの監督対象とされるが、その分類基準は依然として曖昧であるとみられる。
SECの新委員長ポール・アトキンス氏は12日、証券性のある仮想通貨の流通に関する明確な指針を策定する方針を示していた。
法案には、資産発行者が「成熟したブロックチェーンシステム」として追加審査を受ける制度も盛り込まれた。これは分散性やオープンソース性などを基準とするもので、要件を満たせば一部規制の緩和が適用される見込みである。
また、仮想通貨プラットフォームには、銀行秘密法(※2)に基づく金融機関としての登録が義務付けられ、資金洗浄や不正取引の監視体制強化が求められる。
一方、分散型金融DeFi(※3)に関しては直接的な規定はなく、米財務省やSEC、CFTCに対して調査・報告を求める形式にとどまっている。今後1年以内に具体的な法整備の方向性が示される可能性があるとみられる。
今後の展望と規制環境の行方
CLARITY法案は、2025年以降の米国におけるデジタル資産規制の大きな転換点となる可能性がある。とくに、SECからCFTCへの監督権限の移行が本格化すれば、仮想通貨業界はより市場に適応した柔軟なルールのもとで活動できるようになるだろう。
ただし、今後1年ほどは、証券性の判断基準や成熟性審査の具体化をめぐって、法案の運用方針や細則の策定が焦点になるとみられる。これに関連して、ポール・アトキンス氏がどのような指針を示すかが大きな鍵となる。
また、DeFiに関しては、現在の曖昧な対応から脱し、2026年までに包括的な規制体系が導入される可能性が高い。利用者保護やAML(マネーロンダリング防止)との整合性をどう確保するかが問われる局面に入る。
総じて、米国の法整備が進めば、他国にも連鎖的な影響を及ぼす可能性は高く、世界的な仮想通貨規制の再編が進行する契機となるだろう。とはいえ、技術革新と規制の追従には常にタイムラグがあるため、慎重かつ段階的な実装が求められる。
※1 デジタルコモディティ:ビットコインなど、ブロックチェーン技術に基づいて流通・取引される資産であり、商品先物取引委員会(CFTC)の監督下に置かれる対象。
※2 銀行秘密法:金融機関に対し、マネーロンダリング防止などの目的で取引記録の報告義務などを課す米国の連邦法。
※3 DeFi(分散型金融):中央管理者を介さず、ブロックチェーン上で行われる金融サービス全般。代表的な例に、分散型取引所やレンディングサービスなどがある。