PolygonとGSRが支援 DeFi再構築を目指す新チェーン「Katana」がメインネット始動

2025年5月28日、Polygon LabsとGSRが支援するDeFi特化型ブロックチェーン「Katana」のプライベートメインネットローンチが発表された。この新チェーンは、持続可能な高利回りエコシステムの構築を掲げ、6月下旬には一般公開が予定されている。
「Katana」がプライベートメインネットをローンチ
Katanaは、分散型金融(DeFi)分野における構造的な課題である「流動性の分散」と「利回りの短命化」に対処することを目的に設計された、新たなブロックチェーンである。
非営利組織であるKatana Foundation(カタナ財団)が開発を主導し、Polygon LabsとマーケットメイカーGSRが初期支援を行っている。
このチェーンは、PolygonのイーサリアムL2開発ツール「Agglayer CDK(※1)」の「CDK OP Stack」バージョンをベースに構築された。CDK OP StackのAgglayer CDKへの対応は5月7日に発表されたばかりであり、Katanaはこの最新技術を活用した最初のチェーンとなった。
さらに、ロールアップインフラにはConduitが提供するシーケンサーとロールアップ基盤を採用。Katanaは将来的にPolygonのマルチチェーン統合ネットワーク「Agglayer」に接続され、エコシステム全体に新たな流動性を供給する役割を果たすとされている。
ガバナンスおよびユーティリティトークンとして「KAT」が導入され、カタナ財団はPolygonエコシステムへの還元として、Ethereum上でPOLトークンをステーキングしているユーザーにKATの15%をエアドロップすると発表した。
「CoL」と「VaultBridge」が描くDeFiの新モデル
Katanaが提示する最大の革新は、チェーン自体が流動性資産を保有・運用する「Chain-Owned Liquidity(※2)」という新しい仕組みにある。これにより、外部からの資本流入に依存せず、安定した利回りと深い流動性を維持することが可能となる。
また、預けられた資産を効率運用し、ユーザーに実質的なリターンをもたらす「VaultBridge(※3)」も導入されている。この仕組みにより、ユーザーは資産をブリッジする際に「vbToken(Vaultbridgeトークン)」を受け取り、それが自動的に利回り生成に活用される。
このような独自の収益構造は、DeFiにおける「短命な高利回り競争」からの脱却を目指す動きとして注目できる。ネットワーク収益を内部循環させ、再投資することで、持続的な成長と報酬提供の両立を可能にするというビジョンだ。
Katanaは「ただの新チェーン」ではない。独自の経済圏設計により、DeFiのあり方そのものを再定義しようとしている。
流動性の自己管理とユーザーへの還元構造を同時に実現する設計は、従来の「外部依存モデル」からの決別を意味しており、これがKatanaが掲げる再定義の核心である。
※1 Agglayer CDK: Polygon Labsが開発したEthereum互換チェーン構築用の開発ツール群。従来の「Polygon CDK」が2025年5月に改称された。
※2 Chain-Owned Liquidity(CoL): ブロックチェーンネットワーク自身が流動性資産を保有・運用するモデル。外部LP(流動性提供者)依存を軽減できる。
※3 VaultBridge: ブリッジされた資産をスマートコントラクト経由で運用し、利回りを発生させるKatana独自の利回り生成機構。