NTTデータ、大阪・茨木市に大規模データセンター建設　生成AI時代に向け電力・設備を拡充

2025年5月27日、NTTデータグループは大阪府茨木市に「大阪北データセンター」を建設すると発表した。
2027年度下期から第一期棟のサービスを開始する予定で、生成AI時代を見据えた高密度・高電力対応の次世代施設となる。

生成AI時代見据え、大阪北に36MW級施設を新設

NTTデータグループは、グループ会社NTTグローバルデータセンター（NTT GDC）を通じて、大阪府茨木市に大規模データセンター「大阪北データセンター」を建設すると発表した。
第一期棟は2025年秋に着工し、2027年度下期の開始を予定している。

建設地は海抜36.0mの平地で、災害リスクが低く、大阪市や伊丹空港から車で30分とアクセスにも優れる。
完成時には総IT電力容量36メガワット（MW）を供給し、第一期棟では3階建て免震構造で18MWを約5000㎡のサーバールームに提供する。

施設は、Uptime Tier3およびJティア3（※）相当の冗長化設計を採用し、災害対策や高度なセキュリティ、省エネ性能を兼ね備える。
加えて、関西圏の既存データセンターとの連携拠点としても機能する計画だ。第二期棟は2032年に完成予定で、さらに18MWの電力供給を担う。

NTTグループが進める革新的ネットワーク構想「IOWN APN（All Photonics Network）」の実装も計画されており、他データセンターや顧客施設との超高速・低遅延通信が実現される見込みである。
施設は単独での運用にとどまらず、広域なデータセンター群の一部として柔軟に機能する見込みだ。

高密度対応と液冷技術でAI基盤も視野　IOWN接続も予定

大阪北データセンターは、生成AIや大規模AI基盤の稼働を想定した高発熱サーバー対応を特徴とする。
複数のGPUを搭載する高密度ラックに適応し、直接液冷方式（DLC）などの次世代冷却技術を導入可能とする構造だ。

同グループは「NTT DATA NET-ZERO Vision 2040」を掲げ、2030年までにデータセンター領域の排出量実質ゼロを目指している。
大阪北データセンターも、ネットゼロ（※）にできる体制を準備しており、その実現に寄与すると思われる。

一方で、課題も存在する。
まず、建設から提供開始までに約2年半を要することから、急速に変化するAI市場やWeb3のインフラ需要にタイムリーに応えきれるかは不透明だ。

大阪北データセンターは、NTTグループが掲げる「IOWN APN」を実装する最初期の実例となる可能性がある。
これにより、他地域のデータセンターや企業施設との間で超高速かつ低遅延な通信基盤が構築される見通しで、特にリアルタイムAI処理や分散型アプリケーション（DApps）などの高度利用においては、競争力を高めるだろう。

※Uptime Tier3およびJティア3：データセンターの信頼性を示す国際・国内基準。Tier3は年間稼働率99.982％を想定。

※ネットゼロ：再生可能エネルギーの導入や省エネにより、温室効果ガスの排出量を削減するとともに、植林や森林保全活動などの取り組みで吸収・固定させることによって、排出量を差し引きゼロにすること