10Xが「Stailer AI発注」販売開始 属人化解消と業務効率化を同時に実現へ

2025年5月20日、国内スタートアップ10X(テンエックス)は、小売現場向けAI・DXプラットフォーム「Stailer」において、AIによる自動発注提案を可能にする新プロダクト「Stailer AI発注」の販売を開始した。
AIが発注を自動提案、誰でも使える小売現場の新常識に
10Xが開発・提供する「Stailer AI発注」は、スーパーマーケットをはじめとする小売現場における発注業務をAIで最適化するプロダクトである。
属人的な判断に依存していたこれまでの発注作業に対し、過去の販売実績、在庫状況、季節やイベント要因といった多様なデータを統合。AIが最適な発注内容を自動で提案する仕組みを導入した。
この取り組みは、2025年7月からのサービス提供に先立ち、5月20日に販売が開始された。従来は経験豊富なスタッフが担っていた発注業務だが、「Stailer AI発注」を利用すれば、業務経験が浅いスタッフでもモバイルアプリを通じて簡単に発注作業が可能となる。
導入コストは1店舗あたり数万円からと比較的低く、リスクを抑えて小規模に開始できる。また、「Stailerネットスーパー」を利用していない事業者でも単体導入が可能な設計となっており、ネットスーパー非運営企業への普及も期待される。
すでに長野県を中心に60店舗以上を展開するスーパーマーケット「デリシア」が導入パートナーとして名乗りを上げており、業務改革の先行事例として注目が集まる。
発注属人化を脱却 AI導入が生む人材活用と業務再設計の未来
「Stailer AI発注」の導入により、小売現場では発注作業の属人化からの脱却と、ベテランのノウハウ継承が加速する可能性がある。とくに人材不足が深刻な中堅スーパー業界では、経験年数に依存せずに安定した発注が行える点は大きなメリットとなる。
また、発注に要する人時(※)を削減できることで、他業務への人材再配置が進み、店舗全体の生産性向上にもつながると期待される。指標として重視される在庫回転率の向上も見込まれ、結果的に欠品・過剰在庫といった課題の解消にも寄与する。
ただし、AIの判断が常に最適とは限らず、初期導入時には運用上の見直しや現場への教育支援が不可欠である。実際にデリシアでは、AI導入に合わせて業務プロセス自体の再設計も進める方針であり、技術導入と業務改善を一体で進める重要性が示されている。
同社代表の森真也氏は、「Stailer AI発注はまさに今、現場に必要とされている仕組み」とした上で、今後さらに多くの業務をAI・DX化し、地域密着型小売の競争力を強化していく方針を示した。
今後、同様の課題を抱える他地域スーパーへの展開も視野に入るとみられる。
※人時:労働量の単位で、1人が1時間働く作業量を1人時と表現する。業務効率や生産性の分析に用いられる。Stailer AI発注:https://about.stailer.jp/ai-order