中学に「新・技術分野」創設へ　生成AIや情報セキュリティが学習の柱に

2025年5月22日、文部科学省は中学校に新教科「新・技術分野（仮称）」を創設する方針を公表した。情報セキュリティや生成AIなどを中核に据え、情報教育を本格化させる狙いだ。デジタル社会に適応する人材育成の一環として、2030年度から段階的に導入される予定である。

中学に情報教育を本格導入、生成AIも必修に

文部科学省は22日、中央教育審議会の特別部会で「新・技術分野（仮称）」の創設方針を明らかにした。これは中学校の技術・家庭科のうち、技術領域を分離して新設されるもので、情報教育を学習の柱とする。

新教科は、これまで技術分野の一部として扱われてきた情報教育を拡充し、データ分析や情報モラル、生成AIの基本原理、さらには簡易なプログラミング制作までを学ぶ内容に進化する。従来の木工や電気といった技能科目も、IoTやデジタル制御との関連性を重視する方針だ。

これまでの中学教育では、情報教育は体系的に実施されていなかった。
高校ではすでに「情報」が必修化されているが、小中では授業の一部に組み込まれる程度にとどまっていた。今回の改訂により、情報リテラシーの基礎が中等教育段階から確立されることになる。

また、小学校の3～6年生では「総合的な学習の時間」に情報領域が追加される。
ネットリテラシーやデータ活用といった基礎的なスキルを、早期に身につけさせる試みだ。高校についても既存の「情報I」科目の内容強化が検討されており、初等から高等まで一貫した情報教育体系が構築される見通しだ。

人材育成とリスク教育の両立がカギ　生成AI時代の教科改革

今回の教科改編の背景には、急速なデジタル化に対して、教育現場から対応力を強化したい狙いがあると思われる。
生成AIの普及やサイバー攻撃の脅威が現実のものとなる中、若年層から情報モラルやリスクに対する感度を養う必要性が高まっている。

特に生成AIに関しては、その仕組みや限界を理解する力が、今後の社会生活や職業選択において大きな意味を持つ。
新教科では、AIにおける出力の信頼性や情報の偏りなどについても扱う予定であり、単なるツール利用ではない、「批判的思考」を育む視点も重視されそうだ。

一方で、専門人材や教材の不足という課題も浮上するだろう。
AIや情報セキュリティの知識を持つ教員が十分に確保できるかは不透明であり、教育現場には研修体制の整備が求められる。導入に伴い、授業設計や評価方法にも大幅な見直しが必要になるとみられる。
過度な詰め込みや表面的な技術教育にとどまらないよう、今回の教科化を機に、子どもたちが主体的に学び、変化するデジタル社会に対応できる人材へと育つかが問われているといえる。