アスターとアニモカが協業 IP×Web3エンタメの新ファンド計画も視野に

2025年5月21日、日本発のパブリックブロックチェーン(※1)Astar Network(以下、アスター)は、Web3分野の有力企業Animoca Brands(香港)から戦略的出資を受けたと発表した。
両社はIP(知的財産)に特化した新ファンドの立ち上げも視野に入れており、Web3エンタメ領域での展開を本格化させる。
アスターネットワークとアニモカが戦略提携を発表
アスターは、Animoca Brands(アニモカブランズ)と戦略的パートナーシップを締結し、同社から出資を受けたことを明らかにした。
アニモカブランズは、NFTやブロックチェーンゲームに特化した投資を行うWeb3業界の有力企業であり、今回の出資は単なる資金提供にとどまらず、両社のエコシステム連携を目的としたものだ。
提携の背景には、日本およびアジア発のIPをオンチェーン(※2)化し、グローバルなWeb3エンタメ体験へ昇華させたいという共通の戦略がある。
アスターはこれまでにも、パブリックチェーン上でのIP利活用に注力しており、今回の協業によって、より多層的なコンテンツ展開が可能となる見通しだ。
アスターは同時に、新たなプロジェクト「Anime ID」と「Anime Art Fest」の始動を発表した。
「Anime ID」は、ソニーグループのブロックチェーン基盤「Soneium」上で動作し、Web2からWeb3へのスムーズなアイデンティティ移行を促す。
また、「Anime Art Fest」はIPホルダーの権利強化と新たな収益化の機会を提供する場として設計されている。
IP特化ファンド構想に業界の期待 Web3市場の拡大促進へ
両社は今後、IPとエンターテインメント領域に特化した新ファンドの立ち上げを検討している。
複数の機関投資家から既に関心が寄せられており、具体的なスキーム策定に向けた準備が進められているという。
こうしたファンドは、IPホルダーやクリエイターに新たな収益機会を提供する一方、Web3エコシステムへの参入障壁を下げることも期待される。
アスターのネイティブトークン「ASTR」は、これらの取り組みにおいて流動性提供やユーザーエンゲージメント、開発者向けインセンティブの中核を担う。
アスターは、すでにイーサリアムとのクロスチェーン展開も進めており、今後はグローバルIPのWeb3展開を支える中核的な存在へと成長する可能性がある。
一方のアニモカブランズは、2021年のNFTブーム以降、Axie InfinityやOpenSeaなどへの積極的な投資を通じて存在感を高めてきた。
投資先は540件を超え、Web3分野での影響力は極めて大きい。
今回の提携は、IP資産の価値をブロックチェーン上で再定義し、Web3を基盤とした新たなエンターテインメント経済圏を創出する可能性を秘めているといえる。
一方で、オンチェーン化の前提となる法的整備やコンテンツ管理の体制は、依然として不透明なため、IP保護の観点からは慎重な設計が求められるだろう。
※1
パブリックブロックチェーン:特定の管理者が存在せず、誰でも参加できるブロックチェーン

※2
オンチェーン:「ブロックチェーン上に乗っている」こと。
ブロックチェーン上で取引を行った場合は「オンチェーン上で取引が実行された」などと表現される
