マイクロソフト、分析プラットフォーム「Fabric」でAIとデータ統合の新機能を一挙公開

米マイクロソフトは2025年5月19日、年次開発者会議「Build 2025」において、分析プラットフォーム「Microsoft Fabric」の新機能を発表した。
AIエージェントとの連携やデータ統合の高度化により、業務自動化と意思決定の迅速化が可能となるとして注目を集めている。
直感的操作と自動化が進化、Fabricがもたらすデータ活用の新境地
マイクロソフトが公開した最新機能群は、分析基盤「Fabric」の中核を大きく進化させるものである。中でも注目されるのは、プログラミング不要で現実世界のシミュレーションを構築できる「デジタルツインビルダー」だ。
医療現場における手術リスクの可視化や、産業機械の故障予測といった応用が見込まれ、非エンジニア層にもデータ活用の門戸が開かれることとなる。
さらに、AIアシスタント「Copilot」がFabricに統合され、ユーザーは自然言語を用いてダッシュボードを設計したり、複雑なデータフローを生成できるようになる。分析業務の敷居が一段と下がるだけでなく、AIとの対話を通じた仮説検証のスピードも向上する見込みだ。
データ統合面では、NoSQL型の「Cosmos DB」との接続が可能となり、半構造化データの取り込みがFabric内で完結するようになった。これにより、分散するデータソースの一元管理が現実のものとなり、従来課題とされていた断片化やガバナンス面の不整合にも対処できる。
※デジタルツイン:物理空間に存在するモノやプロセスを仮想空間上に再現する技術で、センサーなどから収集された実世界のデータをもとに予測や最適化を行う。
データドリブン経営への加速装置、Fabricの戦略的意義とは
今回の発表により、Microsoft Fabricは単なるBI(ビジネスインテリジェンス)ツールの枠を超え、企業全体の情報基盤を再編する中心的存在へと進化した。
米鉄道大手CSX Corporationでは既に導入が進められており、複数部門にまたがるメタデータの統合によって、運行効率やリスク管理の最適化が進んでいるという。
Fabricが提供する自動化・統合の仕組みは、データサイロを解消し、組織内の部門間連携を滑らかにする。特にCopilotやAIエージェント(※)との連動は、IT部門のみならず業務部門にもデータ駆動型の意思決定を可能にする点で、大きな意義を持つと考えられる。
今後、マイクロソフトはFabricを軸に、AIによる分析支援やセキュリティガバナンスの強化、さらには多様な業種に応じたテンプレートの拡充を計画している可能性がある。こうした方向性は、競合ツールとの差別化を図る上でも重要な布石となるだろう。
※AIエージェント:ユーザーの指示や目的に応じてタスクを自律的に処理する人工知能機能。業務プロセスの自動化や対話型操作を可能にし、生産性向上に寄与する。