電通、外食産業向け「アメちゃんNFT」実証実験を開始 ARとNFTで人材育成を支援

電通グループと大阪外食産業協会(ORA)は2025年5月19日、ARとNFTを融合した「アメちゃんNFT」の実証実験を同年6月より開始すると発表した。この試みは、業界にとって新たなイノベーションの起点となる可能性を秘めている。
ARとNFTの融合で人材育成を視覚化 業界課題へのテクノロジー的アプローチ
外食産業では、慢性的な人材不足が深刻化しており、特に若年層や外国人留学生の確保と定着が大きな課題となっている。こうした現状を打開すべく、電通と大阪外食産業協会はデジタル技術を活用した新たな育成施策に踏み出した。
実証実験の対象となるのは、ORAが主催するインターンシッププログラムに参加する学生たちで、NFC技術を用いて「アメちゃんNFT」が配布される。NFTの基盤にARを組み込むことで、現実世界とデジタルが融合した新しい育成体験が可能になる。
NFTは初期状態では「飴」の形をしており、実地研修などの活動を通じて見た目が変化していく。これはメンターとの関係性や経験の深まりを象徴するもので、参加者のモチベーションを視覚的に刺激する設計となっている。
この技術には、電通グループの研究開発組織である電通イノベーションイニシアティブ(DII)が深く関わっており、AR開発者の川田十夢氏や、ブロックチェーン開発のシビラ社などが技術面を支援している。
ARNFTがもたらす人材育成の未来 業界横断の展開も視野に
この実証実験が示す最大の意義は、「体験の視覚化」が持つ教育的な力にある。
従来、飲食現場でのインターンシップは経験としては価値があるが、評価の仕組みが曖昧であり、参加者にとって成長実感が見えにくかった。
NFTの形状変化によって、目に見える形で人間関係やスキルの成熟が示されることで、参加者は自己成長をリアルタイムで実感できるようになる。この可視化こそが、今後の人材育成施策に新たな価値を提供すると考えられる。
また、今回の仕組みは教育現場や介護業界、小売など人材育成に課題を抱える他産業にも応用可能と見られ、社会全体への波及効果も期待できる。すでに参画しているパナソニックや鳥貴族の動向からも、企業横断的な実用化の流れが加速する可能性があるだろう。
今後は、実証実験の成果をもとに、NFTの教育的な活用法やデータ活用の方法論が整備される見通しだ。ARとブロックチェーンが交差するこの領域は、日本発の先進事例として世界の注目を集めることになるかもしれない。