クウェート、違法な暗号資産マイニングを摘発へ　電力網への負担回避に本腰

2025年5月2日、クウェート政府が国内で急増する違法な暗号資産マイニングを取り締まっており、60人以上が捜査対象となっていると報じられた。
電力網への過剰な負荷を回避し、安定供給を守るための対策であり、電力需要が高まる夏季を前に重要な措置となる。

急増する違法マイニングと電力不足　クウェート政府が講じる緊急対策とは

クウェート政府は現在、無許可で行われている暗号資産マイニングの一斉摘発を進めている。これまでに60人以上が捜査対象となっており、マイニングが行われていると疑われる施設への電力供給はすでに停止された。捜査は継続中であり、今後さらに容疑者が特定される見通しだ。

この措置は、2025年4月下旬に実施された全国規模の「治安作戦」に基づくものだ。この作戦では、住宅地に設置されたマイニング設備を中心に徹底的な調査が行われた。
主導したのは、首相代行のシェイク・ファハド・アル・ユセフ氏と、電力相のスバイフ・アル・ムハイジーム氏であり、国家の重要インフラ保護を目的とした政治的イニシアチブの一環とされている。

実際、クウェート国内では違法マイニングによって一部地域で停電が発生しており、国の電力網への負荷は無視できない水準に達していた。
当局は、内務省の許可なしには電力の再接続を認めないという厳格な対応をとっている。
さらに、電力省と治安当局は共同で、全国各地の疑わしい物件を対象に追跡調査を続行中だ。

背景には、クウェート中央銀行をはじめとした金融規制機関が支持するマネーロンダリング対策委員会の方針がある。
この委員会は、同国内におけるすべてのバーチャル資産・暗号資産マイニングの全面禁止を明確に打ち出しており、政府はそれに準拠した行動を強化している。

違法マイニング排除の先に見える、持続可能なエネルギー管理体制の可能性

クウェート政府が違法な暗号資産マイニングの取り締まりに乗り出したことは、エネルギー政策の観点からは理にかなった対応である。
特に同国のように酷暑が続く地域では、冷房による電力需要が急増し、電力網が不安定化しやすい。
そのタイミングで高出力の計算処理を必要とするマイニングが無制限に行われれば、停電や電圧低下といった深刻なインフラ障害を引き起こすリスクが高まる。

一方で、暗号資産そのものの否定にはつながらない点も注目すべきである。
クウェート政府は、合法的な電力利用の範囲であればマイニングを完全に禁止する意図はないとみられており、あくまで「違法行為の排除」が主眼である。
これにより、制度の整備や産業との共存を図りつつ、エネルギー資源の適切な配分が可能になるだろう。

今後は、電力インフラの監視技術の高度化や、ブロックチェーン分野への適切な投資誘導が重要となる可能性が高い。
クウェートがこの問題にどう対処していくかは、資源依存型国家がデジタル経済とどのように共存するかを示す試金石となりそうだ。