中国製AIモデル、米国との差わずか1.7%に 技術競争の激化と資金格差が浮き彫りに

2025年4月7日、米スタンフォード大学の「人間中心のAI研究所(HAI)」は「AIインデックスリポート2025」を公開した。
同報告では、中国製AIモデルが米国製と比べて急速に性能差を縮めており、両国間のAI競争が新たな段階に突入していることが示された。
ベンチマークで浮かび上がる性能の接近とオープンソース戦略の影響
リポートによると、2024年1月時点で米国製AIモデルが中国製を総合性能で9.26%上回っていたが、2025年2月には1.7%にまで縮小した。
この傾向は複数のベンチマーク指標において顕著であり、各分野での性能差が軒並み解消されつつある。
たとえば大規模言語理解を評価するMMLUでは、17.5ポイントの差が0.3ポイントに、数学問題解決能力を測るMATHでは24.3ポイントの差が1.6ポイントに縮小された。
こうした進展の背景には、中国のAIスタートアップによるオープンソース戦略がある。とりわけ注目されているのが「DeepSeek」による取り組みである。
同社が提供するオープンソースモデルは急速に品質を高めており、クローズドソースモデルとの性能差は2024年1月には8.0%だったが、2025年2月には1.7%にまで迫っている。
これにより、中国国内外での開発者のアクセスと活用が促進され、モデルの改良スピードが加速していると考えられる。
資金格差と国民意識の違いが映す、AI覇権の複雑な構図
技術面での接近が進む一方で、AIに対する民間投資額には依然として大きな隔たりがある。
2024年の民間AI投資額は、米国が1091億ドル(約15兆5000億円※)に達したのに対し、中国は93億ドル(約1兆3000億円※)にとどまり、実に12倍もの開きがある。
この投資格差は、基盤技術の強化や大規模モデルのトレーニング環境の整備に影響を及ぼしており、性能面の差が今後再び広がる可能性も否定できない。
また、国民意識にも顕著な差が見られる。AIの恩恵がリスクを上回ると回答した割合は、中国で83%、インドネシアで80%、タイで77%と高水準を示したのに対し、米国では39%、カナダでは40%と過半数を大きく下回った。
これは、AI導入に対する期待値や文化的受容性、政府の姿勢など複合的な要因が影響していると推測される。
今後は、中国が急速に性能を伸ばす中でも、資金調達力と社会的受容の双方がAI産業の競争力を左右する可能性が高い。
AIを巡る技術覇権は、単なる性能比較を超え、投資・政策・倫理観までを含んだ多層的な競争へと変貌しつつあるだろう。
※1ドル=約142円で計算
Stanford HAI「AIインデックスリポート2025」該当ポスト