OpenAIもMSも韓国に集結 AI戦略の中核地として急浮上する理由とは

2025年4月21日、OpenAIやMicrosoft(MS)をはじめとする世界のビッグテックが韓国市場への関心を強めているとの報道があった。これはグローバルなAI市場における韓国の存在感が確実に増していることを意味する。
韓国を取り巻くAI熱、世界のビッグテック企業が動き出す背景
世界のビッグテック企業が韓国でAI関連イベントを相次いで開催している。
2025年2月、OpenAIが韓国で初となる開発者向けワークショップ「ビルダーラボ」を実施し、カカオとの戦略的提携を発表した。サム・アルトマンCEOは両社が共同でAI製品の開発を進めていることを明かしており、実質的な事業展開を示唆している。
Microsoftも同様に、サティア・ナデラCEOが「MS AIツアー・イン・ソウル」に参加し、韓国スタートアップとの連携事例を発表した。現地の革新企業との共創に積極的な姿勢を打ち出し、今後の市場展開における韓国の重要性を示した。
さらに、Anthropicは韓国のスタートアップ「コックスウェーブ」と共同でリーガルテック分野の連携事例を発表し、CohereはLG CNSと共催したセミナーで、韓国市場向けに特化した「エージェンティックAI(※)」の開発方針を明らかにしている。
これらの動きの背景には、韓国の高度に整備されたデジタルインフラと、AIや新技術への高い受容性がある。特に通信環境やクラウド基盤の成熟度はアジアでもトップクラスで、試験的な技術導入を進めるうえで理想的な土壌となっている。
また、韓国は人口あたりのAI特許出願数で世界1位(2024年時点)を記録しており、理工系の高度な人材が豊富なことも、企業が研究・開発拠点を置く動機となっている。
こうしたエコシステム全体の強さが、世界のAI戦略における「要衝」としての地位を押し上げていると考えられる。
韓国がAIリーダー国家として飛躍するための鍵は“国際協業”にあり
AI分野において、韓国は単なる受け手ではなく、特定領域で主導権を握る存在へと変貌しつつある。これは単に技術的ポテンシャルにとどまらず、政策、教育、産業の連携によって構築された包括的な成長戦略の成果だ。
今後、この成長路線を維持するためにも、グローバル企業との協業体制をいかに強固に築くかが重要になる。現時点では、各社が韓国市場でパートナーと限定的な実証実験やサービス展開を行っているが、共同開発やグローバルローンチに進展させるには、政府の政策支援と透明なデータガバナンスが不可欠だ。
また、AI特許の出願数において韓国は世界トップを誇るものの、その知的財産を実際のプロダクトやビジネスに展開していくプロセスが課題になるだろう。技術力だけでなく、国際市場での競争力を持つ製品開発とビジネスモデル構築が、真の「AIリーダー国家」への鍵を握っている。
こうした中、OpenAIやMSといった世界的企業の存在は、韓国のAIエコシステムを国際的な水準に引き上げる触媒となりうる。交流と共創の密度を高めることで、韓国はAIのグローバルハブとしての地位をより確かなものにしていくのではないか。
※エージェンティックAI:ユーザーの目標達成のために自律的に動作するAIエージェント技術。単なる情報提供ではなく、能動的にタスクをこなす点が特徴。