早稲田大学がAIチャットボット「SELFBOT」導入へ 学生支援の新たなスタンダードとなるか

2025年4月14日、日本国内の大学として先駆けて、早稲田大学がSELF株式会社のAIチャットボット「SELFBOT」を導入することを発表した。従来型チャットボットの限界をRAG技術で打破し、学生・教職員双方の利便性を高める取り組みとして注目が集まっている。
RAG技術で問い合わせ対応を革新、SELFBOT導入の背景とその機能とは
早稲田大学が今回導入を決定した「SELFBOT」は、AIを活用した問い合わせ支援の新基準を提示するものとなる。
これまで同大学では、学生からの問い合わせに対しチャットボットによる対応を行っていたが、その内容は単語検索ベースに留まり、的確な回答に至らないケースが多発していた。また、定期的な更新や情報管理にも多くのリソースを要しており、運用面での負担も大きかった。
こうした課題に対応する形で採用されたのが、SELF株式会社が開発したAIチャットボット「SELFBOT」である。このボットは、RAG(Retrieval-Augmented Generation)技術(※)を活用し、事前にWebサイト上の各ページをAIが読み込むことで、自然言語の質問に対してより正確かつ柔軟な回答を生成することが可能だ。
さらに、SELFBOTはセキュリティ面でも強化が図られている。MicrosoftやGoogleアカウントと連携したSSO(シングルサインオン)(※)機能やIPアドレスによるアクセス制御により、学生や教職員のプライバシーや情報保護にも配慮した構成となっている。
現在は、在学生向けポータル「Support Anywhere」および総合情報サイト「IT Service Portal」での活用が計画されており、Waseda Slackとの連携も視野に入れて、リアルタイムでの情報アクセス環境が整備される見込みである。
※RAG技術:Retrieval-Augmented Generation(検索拡張生成)の略。事前に大量の情報をAIが読み込み、質問に対して関連情報を検索しながら、自然な回答文を生成する手法。
※SSO(シングルサインオン)とは:一度のログイン操作で複数のシステムにアクセスできる仕組み。利便性とセキュリティの両立が可能となる。
SELFBOTが切り拓く次世代の情報アクセスと教育支援
SELFBOTの導入により、早稲田大学では学生の情報アクセスの利便性向上が期待されている。
学事日程や履修登録、キャンパス利用案内といった基本情報へのアクセスがスムーズになることで、学生はより学業に集中しやすい環境を手に入れることになるだろう。
特に、複雑化する大学制度や新入生向けのガイダンス情報などにおいて、24時間体制でのAIサポートが有効に機能する可能性が高い。
また、教職員にとっても大きな変化が訪れると思われる。
問い合わせ対応に割いていた時間が削減されることで、本来の教育・研究業務にリソースを集中させることができるようになる。
これは、大学全体の生産性や対応スピードの向上にもつながるだろう。今後、早稲田大学ではSELFBOTのさらなる活用領域拡大を計画している。
学生相談窓口や国際交流情報、図書館サービスなど、多岐にわたる分野での導入が検討されており、その適用範囲は着実に広がる見通しである。
また、今回の取り組みが他大学への波及効果をもたらす可能性も高く、教育機関におけるAI活用の実証モデルとして、全国的な注目を集めることになりそうだ。