東京都立中央図書館が再整備へ　デジタル技術活用で進化、生成AIによる偽情報対策も視野に

東京都教育委員会は、2025年4月10日の会合において、老朽化が進む東京都立中央図書館を渋谷区の旧「こどもの城」跡地へ移転し、デジタル技術を活用した新たな図書館として再整備する方針を決定した。SNSや生成AIによる偽情報の拡散に対応する機能も備える予定だ。

再整備の舞台は渋谷　老朽化した図書館がデジタル空間で生まれ変わる

東京都立中央図書館は1973年の開館以来、都民の知的活動を支えてきた。
しかし、施設の老朽化と蔵書の保管スペース不足という課題が長年指摘されており、移転を含めた抜本的な再整備が検討されてきた。

今回、東京都教育委員会が打ち出した新たな方針は、渋谷区の旧「こどもの城」跡地に新図書館を設立するというものだ。
再整備は単なる建物の移転ではない。現代のニーズに対応した図書館として再構築する予定だ。
目玉となるのが、デジタル技術を活用した利用体験の刷新だ。大型スクリーンによる展示や、図書館内で来館者同士の交流を図る方針だ。

図書館の再整備において、もう一つの重要な視点が情報の信頼性の確保だ。近年、生成AIやSNSによる偽情報の拡散が社会的課題となっている。
こうした時代背景を踏まえ、東京都立中央図書館は、単なる情報の収蔵場所ではなく、正確で信頼性の高い情報を選別・提示する機関としての役割を強化する方針を示している。

具体的には、司書が厳選した資料や信頼性の高い調査手法を発信し、来館者に提示する取り組みが計画されている。

生成AI時代の図書館、偽情報対策がもたらす可能性と懸念

東京都立中央図書館の再整備における生成AIを意識した偽情報対策は、現代社会が抱える喫緊の課題に対する先進的なアプローチだと評価できる。
最大のメリットは、信頼性の高い情報を提供する図書館の本質的な役割を再定義し、利用者の情報リテラシーを高める拠点となる可能性を秘めている点にある。

特に、SNSやAI生成コンテンツの氾濫により、誤情報や偏った知識が日常的に流通するなかで、専門知識を有する司書による情報の選別や信頼性評価は、来館者にとって極めて有益なガイドとなる。
これは「知識を与える場」から「知識を正しく選ぶ力を育てる場」へと、図書館の機能が進化することを意味する。

一方で、課題も少なくない。
第一に、AIによる偽情報は日々進化しており、図書館側がその技術に追いつき続ける必要がある。専門人材の継続的な育成や、情報精査のための技術的支援体制が不十分であれば、取り組みそのものが形骸化するおそれがある。
第二に、「正しさ」の判断基準が固定化されすぎると、図書館が一種の情報フィルターとして機能しすぎる懸念もある。多様な視点に触れる機会を損なわないバランス感覚が求められる。

図書館が果たすべき役割は、情報を集めるだけでなく、正しく見極める力を社会に育てることに移行しつつあると言える。