エヌビディアCEOが語る「中国市場の重要性」──米中対立下でも揺るがぬ戦略的価値

2025年4月17日、中国国営中央テレビが報じたところによると、米半導体大手エヌビディアのジェンスン・フアンCEOが中国を訪問し、「中国は自社にとって非常に重要な市場である」と発言した。米中関係が緊張を続ける中でも、AI半導体を軸にビジネスを拡大する構えを見せている。

米中緊張の最中でも「中国重視」を掲げるエヌビディア、その意図と背景

今回の訪問は、ジェンスン・フアン氏がエヌビディアの成長戦略において中国市場を重視している姿勢を改めて示した形だ。エヌビディアはAIやデータセンター向けのGPU（グラフィックス・プロセッシング・ユニット）を主力とし、特に生成AIブームの追い風を受けて業績を拡大している。その一方で、米国政府は先端半導体の中国向け輸出を制限しており、エヌビディアにとっては政治的なリスクを含む市場でもある。

フアン氏は今回、国有企業中国五礦集団の任鴻斌会長と会談し、エヌビディアの技術が中国の産業発展に果たす役割について意見を交わした。さらに何立峰副首相とも面会し、中国政府が外国企業に対して投資環境を整備している姿勢を歓迎する旨が伝えられたと報じられている。特にAI半導体は今後の国家戦略とも直結する分野であり、フアン氏の発言はエヌビディアの存在感を維持・強化するメッセージとして捉えられる。

中国では米国の半導体規制に対抗する形で国産化の動きが進むが、それでもエヌビディア製品の技術力には根強い需要がある。同社は米国政府の制限に対応するため、中国向けに性能を調整した「H20」などの製品を開発し、規制の範囲内でビジネスを継続しようとしている。競合のAMDやIntelと比較しても、エヌビディアはAI関連分野での優位性を維持しており、中国市場を「切り離せない成長軸」として位置づけていると見るべきだ。

※GPU（グラフィックス・プロセッシング・ユニット）とは、映像処理や機械学習に特化したプロセッサで、AI計算の中核を担う半導体部品。

規制の狭間で問われる柔軟性──今後の展望と中国戦略の行方

エヌビディアの今後の中国戦略は、米中関係の動向に強く依存するが、同社は「技術を政治から切り離す」姿勢を示しつつ、可能な限り現地でのプレゼンスを維持しようとしている。米国によるH20を含む先端半導体の輸出制限が強化される中でも、エヌビディアは市場ごとに最適な製品を設計し、規制を回避しながら商機を模索しているのが現状だ。

一方で、中国政府もエヌビディアのような先進的技術を持つ外国企業の参入を歓迎しており、投資環境の改善を掲げる動きが続いている。今回の訪問はそのシグナルを確認し合う場でもあったと見られる。特にAIや半導体は中国の産業高度化政策「中国製造2025」の中核をなす領域であり、エヌビディアとしてもその波に乗る形で、今後の収益機会を拡大する狙いがあると予測される。

ビジネスとしての成長を志向しながらも、地政学的リスクにどう対応するかという命題は今後も続く。エヌビディアのフアンCEOが打ち出す戦略は、米中テック冷戦時代における企業の「生き残り方」を示す象徴的なモデルとなりそうだ。