イオンがAI肌診断を導入　個別化する化粧品提案の未来

2025年4月18日、イオンリテールは一部店舗にAI肌診断を導入し、個別化された化粧品提案サービスの本格展開を発表した。国内総合スーパー初の取り組みとして、美容とテクノロジーの融合が注目を集めている。

AI×美容で接客が進化　「skinsense」による肌診断で精度の高い提案を実現

イオンリテールは、美容部門の強化を目的に「Glam Beautique（グラム ビューティーク）」ブランドの一部店舗にAI肌診断ツールを導入した。
このツールは、AIスタートアップNoveraが開発した「skinsense」で、タブレット端末や専用アプリを介して肌の状態を測定できる仕組みだ。

対象項目は肌質、毛穴、キメ、透明感、シミ、シワ、潤いの7種。
これらを分析することで、顧客一人ひとりに適した製品が提案される。

導入の背景には、AI技術の進化とともに求められるパーソナライズ（※）サービスの潮流がある。大量生産・大量販売から脱却し、顧客の肌状態や好みに応じた提案ができる環境を整えることは、リピーターの増加にもつながると見られている。
特に、肌測定後に行われるビューティアーティストによるカウンセリングは、AIの分析結果を補完する重要な工程だ。専門知識とデータの融合により、接客の質が格段に向上する。

加えて、AIは似た肌タイプのユーザーの購買傾向を学習し、顧客に最適な商品をレコメンドする機能を持つ。これは、従来の経験値に依存した販売手法に比べ、科学的根拠に基づいたアプローチと言えるだろう。

※パーソナライズ：個々の顧客の好みや状態に応じて情報や商品を最適化するマーケティング手法。AIによる自動化が進み、特に美容やファッション分野で活用が広がっている。

パーソナライズの先にある顧客体験と市場の競争軸の変化

顧客体験の向上は、テクノロジー活用の成否を分ける鍵だ。
イオンでは、診断結果に基づくカウンセリングに加え、専用アプリからも肌測定や商品の確認が可能となっており、ユーザー自身が積極的に美容に関わる設計がなされている。

また、対象商品を購入すると100円（税抜）ごとに1ポイントが付与されるポイント制度を導入していることも、顧客の購入意欲を刺激していると思われる。AIによる提案→カウンセリング→購買→ポイント付与という一連の体験は、満足度の高いループを形成しており、継続的な関係性構築にも寄与すると予測できる。

また、今回の導入は、市場全体としても、「AI導入による差別化」を加速させるものであると思われる。特にリアル店舗でのテクノロジー活用は、ECとの差別化を図る手段として有効だ。
一方で、競合他社が類似技術を展開する可能性も高く、今後はUIの使いやすさや診断の精度、接客の質といった「体験価値」が競争軸になるだろう。

将来的には、肌の変化を継続的に記録し、予防的な美容提案を行うような仕組みの構築も視野に入ると思われる。
AIと人の融合による美容体験は、より進化した「自分専用のドラッグストア」へと変貌していくだろう。