ルノー、AI活用で車内音響体験の未来を加速　ジャン＝ミシェル・ジャールとの提携を4年間延長

フランスの自動車メーカー・ルノーは、電子音楽の先駆者ジャン＝ミシェル・ジャール氏との提携を4年間延長することを発表したと、2025年4月12日に報道された。
AI技術の導入により、今後発売される新モデルで革新的な音響体験の実現を目指す。

音楽とテクノロジーの融合が生む新たなブランド体験

ジャール氏は、音響工学の専門知識と創造性を活かし、ルノーのUI/UXデザイン部門とエンジニアリング部門、そしてIRCAM（音響音楽研究所）や音響機器サプライヤーと協力することで、新たな音響システムや音楽体験の創出に取り組む。

これまでの提携でも、ルノー車における音響設計は確立されてきた。
車の起動時にドライバーを迎える電子音や、電気自動車が低速走行時に発する歩行者警告音などが開発された。
特に警告音は、ルノーのブランドアイデンティティを反映しつつ、都市の音環境にも配慮された設計が施されている。

これは、従来の「エンジン音」中心の自動車サウンドからの大きな転換でもある。
単なる機能音ではなく、感情に訴える「体験」として音が設計されている点がルノーの先進性を象徴している。

今回の提携延長で注目すべきは、AIの活用による音響体験の高度化である。
ルノーは、提携を通じて開発される革新的機能を、今後発売される新モデルに搭載していく方針だという。

今後の展望

今回の提携延長は、車載音響の新たな潮流を形作る起点になるとみられる。
ジャール氏の関与が続くことで、ルノーは他社との差別化を図りつつ、「音のブランド化」をさらに強める可能性がある。
今後登場する新型EVモデルでは、起動音や走行音がその車のキャラクターを象徴する要素として組み込まれるかもしれない。

また、AIとの融合によって、音響体験は単なる演出から「走行中の情報伝達ツール」や「感情ケアの手段」へと進化する可能性がある。たとえば、AIが天候や運転時間、目的地に応じて音楽や周囲音を変化させる機能などが実装されれば、テクノロジーによるホスピタリティの一環として注目されそうだ。

ただし、法規制や技術標準の整備が追いつかない場合、音響の自由度には制約が生じる可能性もある。特にEVの警告音に関しては国際的なガイドラインが存在しており、独自性とのバランスが今後の課題となる。

総じて、ルノーの試みは自動車が「移動手段」から「体験空間」へと変化していく象徴的な一歩だと言える。音が車の価値の一部になる時代が、すでに始まりつつある。