生成AIを悪用した「楽天モバイル回線不正契約事件」、16歳少年を家裁送致へ AI悪用に警戒強まる

2025年4月7日、東京地検は、楽天モバイルの通信回線を不正契約したとして、岐阜県大垣市の16歳少年を東京家庭裁判所に送致したと発表した。生成AIを悪用したプログラムで他人のID・パスワードを取得し、通信契約やスマホ購入まで行っていた。
AI悪用で不正ログイン、楽天モバイル契約 家庭裁判所への送致に発展
東京地検によると、送致された16歳の少年は、2024年3月から8月にかけて、他人のIDとパスワードを不正に使用し、楽天モバイルのシステムにログインし、本人の許可なく通信回線を契約したという。さらに、他人のクレジットカード情報を用いてスマートフォンを通販サイトで購入していた。
この一連の行為は、「不正アクセス禁止法」(※)および「電子計算機使用詐欺」に該当する。
東京地検は、少年の非行事実を認定し、2025年4月7日付で東京家庭裁判所に送致した。
事件の中心にあるのは、生成AIによって作成されたプログラムの存在である。少年は、このプログラムを使って複数のID・パスワード情報を収集し、不正アクセスに活用していたとされる。
被害者の数や契約された通信回線の具体的な数は明かされていないが、経済的損失が発生していることは事実だろう。
楽天モバイル側も、不正契約およびスマートフォン購入に関する被害報告を確認しており、対応を進めている模様だ。
※不正アクセス禁止法:他人のIDやパスワードなどを無断で使用してシステムにアクセスする行為を禁じる日本の法律。不正利用は刑事罰の対象となる。
生成AIが犯罪ツールに “技術の闇”と今後の対策
今回の事件が注目を集めた背景には、生成AIの悪用という新しい犯罪手口の存在がある。
生成AIは本来、言語生成やコード補助などの有益な用途がある一方、悪意ある利用者が攻撃ツールとして応用するリスクが急速に高まっている。
AIとサイバーセキュリティの関係は、今後ますます重要性を増していくだろう。
被害を未然に防ぐには、事業者側のシステム監視体制の強化とともに、利用者自身の情報管理意識を高める必要がある。また、若年層へのリテラシー教育や、AIツールへの制限設計も重要な論点になりつつある。
本件は、AIの悪用がサイバー犯罪における新たなフェーズに入ったことを示す典型例と言えるだろう。