トランプ氏、AI分野でのプラン作成を指示 規制緩和でバイデン政権の方針と真っ向対立
米国のAI政策が規制緩和に進みそうである。
トランプ大統領は2025年1月23日、人工知能(AI)に関する新たな大統領令に署名し、180日以内に包括的な行動計画を策定するよう指示した。この政策転換により、AI開発企業の規制負担が軽減され、技術革新が加速する可能性が高まっている。
一方で、規制が撤廃されることによるリスクも懸念される。
バイデン政権のAI規制を全面撤回、新たな行動計画の策定へ
トランプ氏は就任直後の1月22日、バイデン前政権が2023年に発布したAI規制に関する大統領令を撤回した。
バイデン政権下では、連邦機関がAIツールの公共利益への影響を評価することが義務付けられ、大規模なAIモデルを開発する企業には政府への詳細な情報開示が求められていた。この方針はAIの安全性と透明性の確保を重視したもので、技術の社会的影響に対する慎重さを評価できる一方、企業のAI開発スピードや競争力を低下させる懸念があった。
特に、開発中のAIモデルの詳細な情報開示要求については、企業の知的財産保護の観点から産業界で議論を呼んでいた。
新政権は、これらの規制を「民間セクターのイノベーションを阻害し、米国の技術的リーダーシップを脅かす不必要な負担」と位置づけている。トランプ氏は新たな大統領令で、「人間の繁栄、経済競争力、国家安全保障を促進する方針」に合致しない既存の政策や規制を停止するよう指示した。
この規制緩和により、AIモデルの開発・リリースサイクルが、大幅に短縮されることが期待されているほか、開発コストの削減も見込まれる。
また、AP通信によれば、規制要件の緩和は特に資金力の限られた新興企業にとって追い風になるとの専門家の指摘があるという。
“イデオロギー的バイアスのないAI”を目指し、規制緩和を推進
この方針転換を主導するのは、新設された「AI・暗号通貨特別顧問」に任命されたベンチャーキャピタリストのデビッド・サックス氏である。
サックス氏はPayPalの創業メンバーとしてフィンテック分野での実績を持ち、近年では有力ベンチャーキャピタルのパートナーとして、AIスタートアップへの投資を手がけてきた人物だ。
スタートアップの育成と技術革新の両面で知見を持つ同氏の起用は、政府の規制緩和方針を実務面で推進する狙いがあるとみられる。特に、テクノロジー企業の成長を阻害しない形での政策立案が期待されている。
トランプ氏の大統領令には、「イデオロギー的バイアスや社会的アジェンダから自由なAIシステムの開発を重視する」という方針がある。これは具体的には、AIシステムの開発において、特定の価値観や社会的目標を優先させない方針であると捉えられる。
現在のAI開発では、コンテンツフィルタリングやアルゴリズムの判断基準において、開発者や企業の価値観が反映される場合がある。新政策は、そうした傾向を見直し、より中立的な技術開発を目指すとしている。
AP通信によれば、この方針転換の背景には、AIの意思決定プロセスをより透明化し、市場のニーズに直接応える技術開発を促進する狙いがあるという。
この「イデオロギー的バイアスから自由に」という方針は、AI開発の実務に大きな変化をもたらす可能性がある。AIの学習データの選定基準は、社会的価値観に基づいてデータの取捨選択が行われてきたが、新方針では、より幅広いデータソースの活用が認められるだろう。
また、AI開発における評価指標がイノベーション重視になることで、社会的影響や倫理的配慮が重視されてきたこれまでの傾向から変化し、技術的性能や市場ニーズが重視される見通しだ。
まとめ
トランプ政権のAI政策は、規制緩和によるイノベーション促進を最優先課題としている。180日以内に策定される行動計画には、AI開発企業の自由度を高める具体的施策が盛り込まれる見通しだ。
Americans for Responsible Innovationのエリック・ガストフレンド事務局長は、「この大統領令は、世界をリードするというビジョンを実現するための暫定的なものである」と言及している。
AI開発競争が新たな局面を迎える中、日本企業にとっても米国の政策動向を注視する必要性が高まっていると言えるだろう。
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