JALカードとNTTデータ、AIで販促効果3%向上 AI時代の次世代顧客分析
日本のJALカードとNTTデータは2024年10月から2025年1月まで、生成AIを活用したマーケティング実証実験を実施していた。その結果、AIが選定したターゲットへのダイレクトメール(DM)で購買率が従来比3.0%向上したと発表した。
両社は「航空×金融」の複合データをAIで解析し、人間が見逃す潜在ニーズを可視化する新手法を確立した。
AIが発見「見えない顧客層」
JALカードの顧客データは、航空券購入や空港ラウンジ利用といった「非日常」の行動と、クレジットカード決済やポイント利用といった「日常」の行動が交差する特徴を持つ。
従来のマーケティングでは、経験豊富な担当者がデータを分析していたが、属人的な判断に依存しがちであるため、運用が非効率であった。
この課題を解決したのがNTTデータの生成AI「LITRON Multi Agent Simulation(MAS)」だ。
この技術は、顧客を購買傾向でクラスタリングした後、各グループから「AIバーチャル顧客」を生成できる。たとえば「高頻度旅行層」と「日常品購入メイン層」を生成し、仮想空間で「どのDMタイトルに反応するか」「商品Bを購入する動機は何か」を議論させることができる。AIエージェント同士の相互作用を通じ、人間が想定しない顧客層や訴求方法を導き出す仕組みだ。
実証実験では、AIが特定した「旅行頻度は低いが高額商品への関心が潜在的に高い層」へのDM送付で顕著な効果が表れた。この層は従来の手法では対象外であったが、AIの特定により購買率向上に大きく貢献したのである。
生成AIが変える意思決定の形
NTTデータによれば、LITRON MASの最大の強みは「人間の集団意思決定をシミュレーションできる点」にある。AIバーチャル顧客が自発的に議論する過程で、最適なターゲット選定基準や訴求文のキーワードが浮かび上がる。
たとえば「ポイント還元率」よりも「旅行特典の拡充」を強調したDMが有効だと判明した事例では、実際のABテストでも同様の傾向が確認された。
この技術は今後、他業種への応用も期待できる。
NTTデータは2025年度中に、生成AIを人事評価や商品開発にも適用する「SmartAgent」プラットフォームの拡充を計画している。すでに一部企業では、AIが社内データを分析して新規事業のリスク評価を行う実証が進行中だ。
ただし、課題も存在する。具体的には、AIが生成するコンテンツの著作権問題や、個人データの取り扱いに関する倫理的な問題などだ。特に金融機関の顧客情報を扱う際は、プライバシー保護とのバランスが重視されるだろう。
AI分析が生むマーケティング
JALカードの実証実験では、AIが選んだ顧客層のうち18%が「従来のマーケティングでは定義されていない新たな属性」に分類された。この事実は、「生成AIが既存の枠組みを超えた分析を可能にする」ことを示唆している。
またNTTデータは、同技術を中小企業向けに簡易版として提供する方針を2025年1月に発表している。データ分析基盤のない企業でも、AIを活用した高精度なマーケティングが実現する未来が近づいている。
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