Mujin364億円、カナリー40億円など大型調達相次ぐ スタートアップ資金調達リサーチ【Week : 12/1-12/5】

12月が始まり、さっそく様々な分野で活躍するスタートアップ企業が資金調達を発表しました。
この記事では、12月1日から12月5日の間にリリースされた、スタートアップの資金調達ニュースをまとめています。さらに、事業内容、調達金額、今後の展望についても詳しく解説します。
フィジカルAIとデジタルツインを統合するMujin、364億円の資金調達を実施
事業内容: 統合型オートメーションプラットフォーム「MujinOS」の開発・提供
調達金額: 364億円(エクイティ209億円、デット155億円)
引受先:NTT、NTTドコモビジネス、カタール投資庁、三菱HCキャピタルリアルティ、Salesforce Ventures、あおぞら銀行、三井住友信託銀行、みずほ銀行、商工組合中央金庫、横浜銀行、UPSIDER Capital、紀陽銀行、名古屋銀行、池田泉州銀行、常陽銀行、福岡銀行、京都銀行、七十七銀行、西日本シティ銀行、八十二銀行
今後の展望: MujinOSプロダクトラインアップの拡充、工場・倉庫全体のデジタルツイン化加速、欧米を中心としたグローバル展開、次世代技術開発のための人材採用強化
Mujinは、独自のフィジカルAIとデジタルツイン技術を駆使した統合型オートメーションプラットフォーム「MujinOS」を開発・提供する総合オートメーションテクノロジー企業です。2011年の創業以来、産業用ロボットに”知能”を与えることで、製造・物流現場の複雑な作業の自動化を手掛けてきました。MujinOSは、ロボット・AGV・保管システム・センサ等の多様な自動機器をデジタルツイン環境で統合制御し、複雑なシステムインテグレーションを不要にすることで、生産施設が信頼性の高い自動化ソリューションを迅速に導入することを可能にしています。
今回の資金調達では、NTTグループとカタール投資庁を共同リード投資家として迎え、シリーズDラウンドのファーストクローズで364億円を調達しました。これにより累計資金調達額は596億円に達しています。調達資金は、従来のインテグレーションを行うロボットソリューション型ビジネスから、よりスケーラブルな製品主導型ビジネスへの移行加速に活用されます。また、自動化需要が旺盛な欧州・北米を中心にグローバル展開を大幅に拡大し、認定システムインテグレーターの強力なネットワーク構築も進めていく予定です。

不動産業でAIを展開するカナリー、約40億円の資金調達を実施
事業内容: 不動産マーケットプレイス「カナリー」、Vertical SaaS「カナリークラウド」の開発・提供
調達金額: 約40億円(株式約30億円、融資等約10億円)
引受先: Angel Bridge(リード)、WiL、みずほキャピタル
今後の展望: 開発体制や技術基盤の強化、AIへの積極的な投資、不動産会社のDXとAI実装を支援するサポート体制の強化
カナリーは、「もっといい『当たり前』をつくる」をミッションに、不動産業界におけるDXとAI実装を推進するスタートアップです。マーケットプレイス「カナリー」は累計ダウンロード数550万件を突破し、不動産情報アプリとしてユーザー評価No.1の★4.8を獲得しています。また、CRM機能をはじめとした充実した機能を備えるVertical SaaS「カナリークラウド」は、全国の地場密着から大手まで多くの不動産会社に導入されています。
不動産業界は深刻な人手不足と人件費の高騰が進む中、アナログな業務が根強く残存し、AI活用に必要な基盤の構築が遅れている状況にあります。カナリーは、Vertical SaaSを介して業務のデジタル化とデータ整備を推進し、プロダクトを通じて体系的に蓄積されるユーザー・物件・業務に関わる複合的なデータを基に、不動産領域に特化した”Vertical AI”を提供していきます。本資金調達により累計調達金額は約80億円となり、業界全体の生産性向上と消費者体験の改善を目指します。

脱炭素ソリューションを手がけるクリーンエナジーコネクト、36.7億円の資金調達を実施
事業内容: Non-FIT太陽光発電によるグリーン電力と環境価値の提供、法人向けグリーン電力ソリューション事業
調達金額: 36.7億円
引受先: 横浜銀行(アレンジャー兼エージェント)、山陰合同銀行(コアレンジャー)、脱炭素化支援機構(JICN)
今後の展望: 25MW-DCのNon-FIT低圧太陽光発電所の開発、オフサイトコーポレートPPAを活用したプロジェクト推進、24時間365日での再生可能エネルギー利用率向上
クリーンエナジーコネクトは、脱炭素経営企業やRE100参加企業に対して、Non-FIT太陽光発電によるグリーン電力と環境価値を提供するスタートアップです。最適なグリーン電力の導入計画の立案から実行支援、導入後の効果検証および目標達成まで、グリーン電力ソリューションをワンストップで提供しています。これまでにAmazon、第一生命保険、NTTグループ、野村不動産グループ、富士フイルム、Google、三菱地所など、多くの大手企業とオフサイトコーポレートPPAサービスの長期契約を締結しています。
今回の資金調達は、合計25MW-DCのNon-FIT低圧太陽光発電所のポートフォリオにおける開発・建設・運営費用に充てられます。本プロジェクトにより、年間約2,670万kWhの再生可能エネルギーによる発電量を見込み、CO2排出削減効果は約1.1万t-CO2/年と試算されています。これにより累計資金調達額は611億円となり、将来的には太陽光発電に蓄電池や風力発電、BEMSを組み合わせることで、24時間365日での再生可能エネルギー利用率向上に向けた取り組みも進めていく計画です。

3Dプリンターの研究開発と社会実装を進めるPolyuse、27億円の資金調達を実施
事業内容: 建設用3Dプリンタの研究開発・製造・販売
調達金額: 27億円
引受先: WiL(共同リード)、グロービス・キャピタル・パートナーズ(共同リード)、ユニバーサルマテリアルズインキュベーター、SBIインベストメント、大和ハウスベンチャーズ
今後の展望: 研究開発基盤の拡充、社会実装に向けた事業体制の強化、2025〜26年度に全国100台の設置計画
Polyuseは、「人とテクノロジーの共存施工」をビジョンに掲げ、国産の建設用3Dプリンタ技術の総合的な研究開発および社会実装を行うスタートアップです。2019年の創業以来、建設業界の少子高齢化、社会インフラの老朽化、災害復旧などの課題解決に取り組んできました。2022年1月に国内初の国土交通省管轄工事での活用を皮切りに、現在まで公共事業を中心に200件以上の建設現場で活用されており、国内最多の施工実績を誇っています。
2025年9月より国産の建設用3Dプリンタ「Polyuse One」を全国に販売・設置を開始しており、ハードウェア・ソフトウェア・マテリアルまで自社で一貫開発する稀有な企業として注目を集めています。建設用3Dプリンタは従来の建設方法と比べてより迅速かつ効率的にコンクリート構造物を作製でき、建設工程の効率化や労働力の削減、安全性の向上が期待されています。経済産業省のJ-Startup企業に選出されているほか、令和4年度国土交通省インフラDX大賞で優秀賞を受賞するなど、その技術力は高く評価されています。

海外向けEC運営用のプラットフォームを提供するQuickCEP、約20億円の資金調達を実施
事業内容: AIエージェントを活用した海外向けEC/CXソリューションの提供
調達金額: 約20億円
引受先: 複数のグローバルVCおよび事業会社
今後の展望: AIエージェント技術の高度化、グローバル製品の拡張とローカライズ、欧米・中東・アジア圏での事業拡大
QuickCEPは、海外向けEC運営に必要となるAIエージェント・チャットサポート・CDP・マーケティング自動化をワンストップで提供するSaaSプラットフォームを展開するスタートアップです。シンガポールに本社を置き、日本支社を東京に構えています。Pop Mart、TCL、Honor、XiaomiなどのグローバルブランドをはじめとしたDTC型の越境ECブランド、海外市場で実店舗サービスを展開する飲料・物流・小売系ブランドまで、幅広い企業のCX運用を支援しています。
同社のAIエージェントは問い合わせの85%以上を自動解決し、オペレーション効率の大幅改善と顧客満足度の向上を実現しています。特徴的なのは、AIエージェントが顧客とのすべての対話を蓄積し、精緻なタグプロファイルを生成する「記憶」機能で、マーケティングからアフターサービスまで一人ひとりに合わせたパーソナライズ体験を提供できる点です。調達資金は、自動対応率向上や多エージェント連携などAIエージェント技術の高度化、多言語対応強化やCDP/MAの高度化による世界標準プロダクトの構築、そして欧米・中東・アジア圏でのオペレーションチーム強化に充てられます。

まとめ
12月1日から12月5日のスタートアップ資金調達例をまとめました。
今週は、Mujinが364億円という大型調達を実施し、国内スタートアップの資金調達としても注目を集めました。NTTグループやカタール投資庁といったグローバルな投資家を迎えた点からも、産業オートメーション分野への期待の高さが窺えます。また、カナリーの約40億円、Polyuseの27億円など、不動産DXや建設テックといった既存産業のデジタル化を推進する企業への投資も活発でした。特にPolyuseは建設用3Dプリンタという革新的技術で人手不足解消に取り組んでおり、大和ハウスベンチャーズなど事業会社からの出資も受けています。
脱炭素・サステナビリティ領域では、クリーンエナジーコネクトがプロジェクトファイナンスで36.7億円を調達し、累計611億円に達しました。RE100対応などの企業ニーズに応えるグリーン電力ソリューションへの需要は引き続き堅調です。また、QuickCEPの約20億円調達は、AIエージェントを活用したグローバルCX市場の成長性を示しています。今週の調達事例全体を通じて、AI技術の実装、産業DX、脱炭素という3つのテーマが投資家から高い評価を受けていることが明らかになりました。
「Plus Web3」では、今後も資金調達例を紹介してまいります。











