AI活用で契約DXが加速、光量子コンピュータも資金調達 スタートアップ資金調達リサーチ【Week : 10/20-10/24】

10月も後半に入り、引き続き様々な分野で活躍するスタートアップ企業が資金調達を発表しました。
この記事では、10月20日から10月24日の間にリリースされた、スタートアップの資金調達ニュースをまとめています。さらに、事業内容、調達金額、今後の展望についても詳しく解説します。
ヘリコプターを利用したサービスを提供するSpace Aviation、17.4億円の資金調達を実施
事業内容: ヘリコプターを用いた旅客輸送、遊覧飛行、防災・減災支援事業、航空機販売
調達金額: 17.4億円
引受先: ZUUターゲットファンド for SA投資事業有限責任組合、特定投資家向け銘柄制度(J-Ships)による調達
今後の展望: 海外展開に向けたロールアップM&Aの実行、航空人材の育成・交流、機体・部品等の調達力強化、次世代エアモビリティを活用した新しい移動インフラ構築の推進
Space Aviationは、「空の移動革命」を通じて社会課題解決を目指すスタートアップです。ヘリコプターの利便性を最大限に活用し、交通の不便な地方と都市を結ぶことで、観光客の地方へのアクセスを改善し、地域経済の活性化に貢献してきました。創業6年で年間売上高36億円を達成し、ヘリコプターによる旅客輸送においては国内トップクラスの飛行実績を保持。現在は北海道から沖縄まで、全国9拠点を結ぶ広範な運航ネットワークを構築しています。
今回の資金調達は、海外市場の獲得を主な目的としており、特に米国拠点の獲得を計画しています。海外進出によって企業成長だけでなく、パイロットや整備士などの人材育成や強固なサプライチェーンを獲得することが目標です。また、2030年頃に到来が予測される「空飛ぶクルマ」時代を見据え、既存の運航・整備基盤として次世代エアモビリティを活用した新しい移動インフラ構築を目指しています。災害時には緊急支援基地として機能するなど、防災インフラとしての重要な役割も担っています。

光量子コンピュータの開発を行うOptQC、15億円の資金調達を実施
事業内容: 光量子コンピュータの研究・開発・提供
調達金額: 15億円
引受先: グローバル・ブレイン、東京大学協創プラットフォーム開発、デライト・ベンチャーズ、科学技術振興機構
今後の展望: NEDO事業に基づく「1万量子モード入力の光量子コンピュータの開発」、新型プロセッサの研究開発の本格推進、優秀な人材確保と積極的な設備投資
OptQCは、光量子コンピュータの早期実現を目指すスタートアップです。今年1月に実施したシードラウンド(6.5億円)と合わせ、累計調達額は21.5億円となりました。光技術の特長である常温常圧での動作、高いスケーラビリティ、超高速計算能力を活かし、世界に先駆けて量子コンピュータの実用化を目指しています。同社は光量子技術において世界トップレベルの技術力を持ち、先日採択されたNEDO事業を中心に、来年実施予定のシリーズA2と合わせて総額100億円規模の体制を整えることが目標です。
今回調達した資金は、NEDO事業に基づき進める「1万量子モード入力の光量子コンピュータの開発」に重点的に充当されます。優秀な人材をさらに集めると共に積極的な設備投資を進めることで、光量子コンピュータの開発を一層加速させ、グローバルプラットフォーマーとしての地位確立を目指しています。

デジタルIPスタジオのQREATION、10億円の資金調達を実施
事業内容: デジタルIP開発・運営、ブランドマーケティング支援事業
調達金額: 10億円
引受先: ジャフコ グループ
今後の展望: グローバル市場を視野に入れたIP開発と事業拡大、企業と共創する新しい広告モデルの確立、Z世代クリエイターコミュニティの拡大
QREATIONは、SNSを起点とした数多くのヒットコンテンツを生み出す「デジタルIPスタジオ」です。代表作には、SNS総再生数18億回超を誇るショートコントシリーズ『本日も絶体絶命。』や豪華俳優陣が出演するショートドラマ『いつだって究極の選択』、Z世代から大人気の縦型ショートバラエティ『ちょこっとぱーちー』、恋愛ショートドラマ『ときめき図鑑』など。これらのIPコンテンツを筆頭に、TikTok・YouTube・Instagramなどを中心に年間数十億回規模の再生を記録し、国内トップクラスの支持を集めるデジタルIPブランドとして成長しています。
今回の資金調達は、グローバルを見据えたデジタルIPの拡大を目的として実施されました。2025年10月より「デジタルIP事業部」を新設し、縦型ショートコンテンツに加え、YouTubeをはじめとする横型の中長尺コンテンツの開発にも注力しています。企業や芸能事務所と連携のもと、海外展開を前提としたIP開発を本格的に推進し、日本発のドラマやコント、バラエティなどのデジタルIPを通じてグローバルにリーチする方針です。また、生活者が「見たい」と思える良質なコンテンツを軸にしたブランデッドエンターテインメントの提供や、Z世代クリエイターコミュニティの拡大にも取り組みます。

クラウドとAIを基盤とするプラットフォームを構築するHokanグループ、総額10億円の資金調達を実施
事業内容: 保険代理店向け顧客・契約管理サービス、保険業界向けコンサルティング、P2P補償モデルの提供
調達金額: 10億円
引受先: あおぞら企業投資、静岡銀行、商工中金、名古屋銀行、Flex Capital(Fivot)、福岡銀行
今後の展望: 顧客基盤の拡大と信頼関係の深化、プロダクトの進化と規制対応内包型モデルの確立、新規事業開発と事業領域の拡張、M&Aの積極的な検討
Hokanグループは、「保険業界全体のアップデートとアップグレードを実現する」というミッションを掲げ、プロダクトを提供する株式会社hokan、ソリューションを提供する株式会社CIEN、P2P補償モデルや関連システムを提供するFrich株式会社からなる持株会社です。今回の資金調達では、株式の希薄化を回避しつつ、加重平均資本コストの最小化を図るとともに、成長投資に必要な資金を確保するためデットファイナンスを選択しました。これによりグループ各社における資金調達累計額は32億円となります。
今回の資金調達を契機に、クラウドとAIを基盤とする規制対応内包型の保険流通プラットフォームを構築することで、保険業界への貢献を加速させていく方針です。具体的には、顧客との信頼関係を事業の核と位置づけ、各セグメントにおける導入実績をもとに横展開を進めます。さらに、コンサルティングやP2P補償モデルを活用した保険業界の課題解決、自治体との連携や共済領域への参入、BPO/BPaaSモデルによる顧客事業の成長支援など、事業領域の拡大にも積極的に取り組んでいきます。

法務と事業部門の協業性を高めるクラウドサービスを展開するHubble、8億円の資金調達を調達
事業内容: 契約業務・管理クラウドサービス「Hubble」の提供
調達金額: 8億円
引受先: Vertex Ventures Southeast Asia & India、DNX Ventures
今後の展望: 開発体制の強化、生成AIを活用したプロダクトの進化、グローバル展開を見据えた組織基盤の整備
Hubbleは、法務と事業部門の協業性を高める契約業務・管理クラウドサービス「Hubble」を提供するスタートアップです。リリース以降、導入社数は増加を続け、累計700社以上の企業に利用されています。2024年7月に正式ローンチした契約AIエージェント「Contract Flow Agent」で、20週連続で新機能を提供するなど、高い開発スピードを維持しています。継続率は99%と高く、上場企業を中心に多くの企業から長期的に利用される信頼性の高いサービスとなっています。
今回の資金調達では、シンガポール政府系投資会社を母体とするVertex Ventures Southeast Asia & Indiaを引受先に迎えており、同社にとって日本のリーガルテック領域への初のエクイティ出資です。調達した資金は、生成AIを活用した新機能開発や既存プロダクトの強化、カスタマーサクセス・導入支援体制の拡充に重点的に投資され、2025年度内に「Contract Flow Agent」の機能完成を目指しています。業界初の「カスタム項目AI自動入力」機能を搭載し、改正電子帳簿保存法にも完全対応するなど、契約業務のインフラとして日本の生産性向上に貢献していく方針です。

まとめ
10月20日から10月24日のスタートアップ資金調達例をまとめました。
今週の資金調達ニュースで特に目立つのは、AI技術を活用した既存産業のDX推進です。Hubbleの契約AIエージェントによる法務業務の効率化、OptQCの光量子コンピュータによる次世代計算技術の開発、Hokanグループの保険業界向けAI基盤など、AI技術を核とした革新的なサービスが多額の資金を調達しています。これらの企業は単なる技術提供にとどまらず、業界全体の生産性向上や課題解決に貢献する包括的なソリューションを提供している点が投資家から高く評価されています。
また、デジタルコンテンツ分野での資金調達も注目されます。QREATIONのデジタルIPスタジオは、SNSを起点としたコンテンツで年間数十億回規模の再生を記録しており、グローバル展開を見据えた成長戦略が評価されています。Space Aviationのヘリコプター事業も、地方創生や防災といった社会課題解決に貢献しながら、次世代エアモビリティへの展開を視野に入れており、既存インフラと新技術を組み合わせた持続可能なビジネスモデルが投資を集めています。このように、技術革新と社会課題解決を両立させるスタートアップへの資金流入が活発化していることが、今週の大きな特徴といえるでしょう。
「Plus Web3」では、今後も資金調達例を紹介してまいります。











