核融合企業が93億円超えの超大型調達 スタートアップ資金調達リサーチ【Week : 9/8-9/12】

9月も中旬に入り、引き続き様々な分野で活躍するスタートアップ企業が資金調達を発表しました。
この記事では、9月8日から9月12日の間にリリースされた、スタートアップの資金調達ニュースをまとめています。 さらに、事業内容、調達金額、今後の展望についても詳しく解説します。
物流業・製造業向けに自動化ソリューションを提供するROMS、約13億円の資金調達を実施
事業内容: 物流業・製造業向け自動化ソリューション開発・提供
調達金額: 13億円
引受先: DNX Ventures、Monoful Venture Partners、UTEC、Spiral Innovation Partners、BRICKS FUND TOKYO、金融機関4社
今後の展望: PR・マーケティングの加速、新規採用、次世代モデルの開発を含む各種投資
ROMSは、物流業・製造業向けに、ハードから制御ソフト・UIまで各種自動化ソリューションを自社開発・販売している企業です。同社の主力製品である小型自動倉庫「Nano-Stream」は、省スペース設計・短納期導入・高拡張性を兼ね備え、わずか100㎡からのスモールスタートを実現しています。AGVやクレーンによる柔軟な運用設計により、多様な物流現場の自動化を後押ししており、4〜6か月の短納期導入を可能にする開発体制が強みとなっています。
今回の資金調達は、2022年9月以来3年ぶりの実施となり、過去2~3年でEC・物流・製造業様向けのソリューションにピボットしたことが評価されました。新規VCであるMonoful Venture Partnersの参画により、物流施設への展開加速が期待されています。

腸内細菌研究に基づいた医療・創薬を推進するメタジェンセラピューティクス、約23億円の資金調達を実施
事業内容: 腸内細菌叢移植(FMT)医薬品の開発・創薬事業
調達金額: 23.2億円
引受先: ファストトラックイニシアティブ、ジャフコグループ、JICベンチャー・グロース・インベストメンツ、慶應イノベーション・イニシアティブ、みずほキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、スパークス・アセット・マネジメント、Arcus South East Asia、みらい創造インベストメンツ、電通ベンチャーズSGPファンド、国際協力銀行
今後の展望: 潰瘍性大腸炎治療薬MGT-006の開発推進(2026年の日米治験を含む)、腸内細菌ドナーからの便調達・治験薬製造を中心としたサプライチェーンの強化、組織体制の強化および人材拡充
メタジェンセラピューティクスは、腸内細菌研究に基づいた医療と創薬でソーシャルインパクトを生み出す、順天堂大学、慶應義塾大学、東京科学大学発ベンチャーです。同社は2025年4月に日本初となる「つるおか献便ルーム」を山形県鶴岡市に開設、同年5月には「FMT治験薬製造センター」を神奈川県川崎市に開設し、日本発のマイクロバイオーム医薬品(FMT医薬品)の開発を進めています。
現在潰瘍性大腸炎を対象とした「抗菌薬併用腸内細菌叢移植療法」が先進医療Bとして実施されており、データ解析が進んでいます。また、食道がん・胃がんやパーキンソン病を対象とした臨床研究も順調に進行中で、グローバル投資家を含む新規投資家4社の参画により、国際的な展開も視野に入れています。

加水分解技術を活用して食品原料を開発する日本ハイドロパウテック、約4億円の資金調達を実施
事業内容: 独自の加水分解技術を活用した革新的な食品原料開発
調達金額: 約4億円
引受先: Inabata Thai Co., Ltd.(IK-T)
今後の展望: タイを生産・販売拠点としたASEAN市場における戦略的パートナーシップの構築、現地ニーズに対応した新製品の共同開発、タイ国内での製造・加工の現地化の検討
日本ハイドロパウテックは、2014年の創業以来、加水分解製造の独自技術を活用して、食品の企画・開発・製造・販売を行っています。同社の技術は、従来の醸造や発酵法と比べて圧倒的に分解時間を短縮でき、化学薬品を一切用いず、わずかなエネルギーで環境負荷を軽減することが可能です。アレルゲンフリー対応や、代替乳分野、代替肉分野への応用が期待される技術として注目を集めています。
2024年4月に海外子会社Hydro Powtech Singaporeの運営を開始し、自社ブランド「ANY1 CHOCO」の店舗展開及び当社加水分解物製品のASEAN市場での販路開拓を本格化しました。今回の稲畑産業タイ法人からの出資により、タイ国を始め東南アジア各国での輸入販売体制を強化し、将来的には現地生産も視野に入れています。

フュージョンエネルギープラントのエンジニアリングを手掛ける京都フュージョニアリング、93.8億円の資金調達を実施
事業内容: フュージョンエネルギープラントのエンジニアリング
調達金額: 93.8億円(エクイティ14.5億円+デット53億円)
引受先: 京セラベンチャー・イノベーションファンド1号、JERA、三井住友信託銀行、日本政策金融公庫、国際協力銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、京都銀行
今後の展望: UNITY-1, UNITY-2をはじめとする技術開発投資の加速と大型化、FASTプロジェクトの推進、グローバル事業の推進および採用活動
京都フュージョニアリングは、京都大学をはじめ、日本で長年培われてきた核融合研究の成果に基づき2019年に設立された、フュージョンエネルギープラントのエンジニアリング企業です。プラズマ加熱システム「ジャイロトロンシステム」、核融合反応で発生するエネルギーを利活用する「フュージョン熱サイクルシステム」、燃料を絶えず供給する「フュージョン燃料サイクルシステム」を手掛けており、世界中の研究機関や民間企業への納入実績を積み重ねています。
同社が参画する日本での民間主導のフュージョンエネルギー発電実証プロジェクト「FAST」は、2030年代の発電実証を目指しており、事業規模はこれまでの10倍程度となることを想定しています。今回の大型資金調達により、フュージョンエネルギーの早期実現に向けた開発が大きく加速することが期待されています。

オーダーメイドの介護サービスを運営するイチロウ、11.3億円の資金調達を実施
事業内容: オーダーメイドの介護サービス「イチロウ」の運営
調達金額: 11.3億円
引受先: ファストトラックイニシアティブ、Aflac Ventures Japan、MPower Partners Fund、Open Network Lab・ESG1号投資事業有限責任組合、Cygames Capital、三井住友海上キャピタル、明治安田未来共創投資事業有限責任組合、One Capital、日本政策金融公庫
今後の展望: サービス基盤(オペレーション構築・システム開発)の強化、マーケティング強化、エンジニアや介護・看護領域の専門人材採用の加速、全国の事業者との連携拡大
イチロウは、公的介護保険では支援が受けられない在宅介護ニーズに対し、介護士を手配するサービスのプラットフォームを運営しています。現在の介護保険制度では、サービス内容や利用時間に制限があるため、要介護者や家族の多様なニーズに対応しきれていない現状に対し、24時間365日、ニーズに応じた柔軟なサポートを提供しており、1回2時間からのスポット利用が可能で、最短当日から利用できる仕組みを整えています。
昨年11月には国際認証「B corp」を取得し、今年2月には経済産業省と連携のもと「介護関連サービス事業協会」を設立、代表理事として業界全体の未来づくりを牽引しています。介護×テクノロジーによる業界課題の解決を目指し、利用者体験向上と介護士・看護師を中心とした働き手の就労環境の向上に注力していきます。

まとめ
9月8日から9月12日のスタートアップ資金調達例をまとめました。
今週の資金調達では、社会課題解決型のスタートアップが大型調達を実現している点が特徴的でした。物流業界の人手不足に対応するROMSの自動化ソリューション、超高齢化社会に対応するイチロウの介護サービス、そして脱炭素社会の実現に向けた京都フュージョニアリングのフュージョンエネルギー開発など、いずれも日本が直面する重要課題に真正面から取り組む企業が、国内外の投資家から高い評価を受けています。
また、海外展開を本格化する企業も目立ちました。日本ハイドロパウテックのASEAN市場進出、メタジェンセラピューティクスの日米治験計画など、日本発の技術を世界に広げる動きが加速しています。特に京都フュージョニアリングの93.8億円という大型調達は、エクイティとデットを組み合わせた資金調達手法の多様化を示すとともに、ディープテック分野への期待の高さを物語っています。今後も各社の事業展開と、それを支える投資環境の進化に注目が集まります。
「Plus Web3」では、今後も資金調達例を紹介してまいります。











