テクノロジーを活用した社会課題解決型ビジネスに注目 スタートアップ資金調達リサーチ【Week : 8/11-8/15】

8月も中旬に入り、引き続き様々な分野で活躍するスタートアップ企業が資金調達を発表しました。
この記事では、8月11日から8月15日の間にリリースされた、スタートアップの資金調達ニュースをまとめています。さらに、事業内容、調達金額、今後の展望についても詳しく解説します。
ITを活用したヘルステック事業を展開するFiT、15億円の資金調達を実施
事業内容: ITを活用したヘルステック事業、最新鋭のフィットネスジム「LifeFit」の運営
調達金額: 15億円
引受先: 京都銀行、関西金融機関、メガバンク等
今後の展望: 2025年中の直営ドミナント出店、全国規模でのフランチャイズ(FC)店舗拡大、既存店舗のサービス品質向上・運営体制強化
FiTは、「暮らしにフィットネスを」というビジョンを掲げ、フィットネス参加率が低い日本において「健康の民主化」を推進するヘルステックスタートアップです。主力サービスの「LifeFit」は、アプリで最短1分・24時間いつでもジムの利用が開始できるフィットネスジムで、リーズナブルな料金体系(30日 税込3,058円~)と初期費用・管理費0円という価格設定で成長を遂げています。現在全国で161店舗を運営し、24時間型フィットネスジム業界でTOP3の店舗数となる見込みです。
同社の強みは、IT技術を駆使した無人フィットネスという新しいスタイルにあります。会員登録・ジム利用・ポイント管理・店舗検索や混雑状況の確認等がアプリで完結するなど、利便性と効率性を両立しています。今回の資金調達により、関東15店舗、関西10店舗、東海10店舗、沖縄9店舗、東北8店舗、九州7店舗の新規出店を予定しており、2025年中に250店舗突破を目指します。

秋葉原カルチャーを発信するREAL AKIBA GROUP、約5億円の資金調達を実施
事業内容: 秋葉原発サブカルチャーを基盤としたエンターテインメント事業、XTuberタレントプロデュース
調達金額: 約5億円
引受先: GENDA GiGO Entertainment、MIXI、カヤック、GLOE、ユナイテッド、アノマリー、スタートアップファクトリー等
今後の展望: リアルアキバグループの事業拡張、新規事業・サービス開発、人材採用、IP開発、タレントプロデュース、海外展開
リアルアキバは、「秋葉原の”土地”と”カルチャー”を【世界中に創る】こと」をミッションに掲げ、秋葉原カルチャーとダンス・音楽を融合させた独自のエンターテインメント事業を展開するスタートアップです。同社が擁する「REAL AKIBA BOYZ」や「O-MENZ」は、日本武道館単独公演を成功させ国際フォーラム単独公演を実施するなど、アニメ×ダンス×ライブの融合をテーマにした新しいエンターテインメントを創出しています。傘下の「METEORA st.」には、DOES、fhána、岸田教団&THE明星ロケッツなどのアニソンアーティストが所属し、総計160名強、所属フォロワー数のべ5000万強を誇るグループとなっています。
同社の事業は5つの柱で構成されており、広告・プランニング事業では年間200作品を越えるアニメーションのプロモーション案件に関わり、ライブ&フェス&DJ事業では「Live Cipher」シリーズなどジャンル横断型エンタメを発信しています。また、現在20店舗強の秋葉原カルチャーに寄り添った店舗を運営し、今後5年間で100店舗展開を目指す「Road To 100」計画を掲げています。新たに立ち上げた音楽事業部「REAL AKIBA MUSIC」「REAL AKIBA RECORDZ」では、アニソン×IP×ダンスで”秋葉原発・世界行き”の音楽プロジェクトを展開し、グローバル市場への進出を加速させていく予定です。

AIチューター「Knock(ノック)」のHanji、シードで資金調達を実施
事業内容: 生成AIを活用した中高生向けAIチューター「Knock」の開発・提供
調達金額: 約3億円
引受先: Angel Bridge、Coreline Ventures
今後の展望: AIスキャン機能の精度・UX改善、進路サポート機能や個別学習プラン作成機能の開発、教育機関への導入加速
Hanjiは、「次の時代の担い手のための教育をつくる」をミッションに、EdTech企業の元事業責任者などを中心に2023年12月に設立されたスタートアップです。2024年10月にローンチした「Knock」は、手元のわからない問題を端末で写真に撮るだけで、ヒントや解説、重要ポイントを一人ひとりに寄り添って示してくれる「AIスキャン」機能が特徴のAIチューターアプリ。提供開始から半年で10万ダウンロードを突破し、4000件以上のレビューで評価★4.8以上を獲得しています。教育特化の生成AIにより、日本の中高生に馴染みのある用語や内容で説明し、すぐに答えを出さずヒントやステップごとの解説を提示することで思考力を引き出す設計となっています。
Hanjiは、これまでのICT教材やAIドリルが生徒の負荷を増やし消化不良を起こすことが多かったという課題に着目し、子どもたちの今に寄り添う「伴走者」としてのAIチューターの実現を目指しています。現在、アプリストアを通じた中高生への直接提供に加え、学校等の教育機関を通じた提供も積極的に行っており、今回の資金調達により、開発人材及び法人担当人材の採用を強化し、広い範囲で生徒の学習全体をサポートする「AIチューター=伴走者」としての機能拡充を進めていく計画です。

アフリカ未電化地域での課題解決に挑戦するWASSHA、3億円の資金調達を実施
事業内容: アフリカ未電化地域でのソーラーLEDランタンレンタルサービス「Energy as a Service(EaaS)」の提供
調達金額: 3億円
引受先: 商工組合中央金庫(商工中金)
今後の展望: 新規サービスの開発、既存事業の拡大、人材獲得による組織強化、現地人材の育成
WASSHAは、「Power to the people」をミッションに掲げ、2013年の創業以来アフリカで事業を展開する社会課題解決型スタートアップです。現在世界で6億人以上が電力にアクセスできない状況にあり、その85%がアフリカに集中しています。WASSHAは、タンザニア、ウガンダ、モザンビーク、コンゴ民主共和国、ナイジェリアの5カ国において、現地の小売店(キオスク)を活用したソーラーLEDランタンのレンタルサービスを展開し、現在約6,600店舗のネットワークを通じて地域住民に持続可能な電力ソリューションを提供しています。
同社のランタンは、灯油ランプと同等のレンタル価格で経済的かつ安全性が高く、家庭での学習環境改善、夜間の商業活動促進、女性の経済活動支援など、包括的な社会インパクトを創出しています。また、現地法人を通じて雇用創出にも大きく貢献することで、地域経済の活性化を推進してきました。今回の資金調達により、単なる電力提供にとどまらず、現地コミュニティと深く連携し、持続可能なエコシステム構築を通じて「誰一人取り残さない」包摂的な成長を目指し、社会課題解決と企業としての利益創出・成長を両立させる持続可能かつスケーラブルなビジネスモデルの確立を加速させる方針です。

XTuberタレント事務所を運営するPANDORA、4.4千万円の資金調達を実施
事業内容: VTuberおよび3次元タレントの両軸で活動するXTuberタレント事務所の運営
調達金額: 4408万5000円
引受先: 非公開(投資家各社)
今後の展望: タレント支援・新規IP創出・配信コンテンツ制作・AIソリューションの構築、XTuber事業の拡大
PANDORAは、「作ろう。世界中の誰かの居場所を」をミッションとして掲げ、バーチャル(VTuber)とリアル(3次元タレント)の垣根を越えて活動する次世代型タレント「XTuber」のマネジメントおよびエージェント業を展開するスタートアップです。2025年3月に設立された同社は、VTuberとしてのオンライン活動だけでなく、リアルイベント・テレビ・広告・舞台・音楽など幅広い分野での活躍を支援し、「好きなものを好きと言える」「自分らしくいられる」社会の実現を目指しています。
今回の増資により、タレント活動領域の拡大、独自IPの創出、配信・リアルイベントの体制強化、AIソリューションの構築などを目指します。「誰かの居場所を作る、次世代エンターテインメント」を実現するべく、リアルとバーチャルを融合したコンテンツ制作や海外展開を推進していく計画です。

まとめ
8月11日から8月15日のスタートアップ資金調達例をまとめました。
今週の資金調達ニュースからは、テクノロジーを活用した社会課題解決型ビジネスの多様化が顕著に見られました。FiTのヘルステック事業やHanjiのEdTech事業は、日本国内の健康増進や教育改革という社会課題にテクノロジーで取り組んでおり、WASSHAはアフリカの電力問題という地球規模の課題に挑戦しています。特に注目すべきは、これらの企業がいずれも持続可能なビジネスモデルを確立しており、社会的インパクトと収益性の両立を実現している点です。FiTは既に161店舗を展開し業界TOP3入りを目指し、Hanjiは半年で10万ダウンロードを達成するなど、着実な成長を遂げています。
また、エンターテインメント領域では、リアルアキバとPANDORAがそれぞれ独自のアプローチで新しい市場を開拓しています。リアルアキバは秋葉原カルチャーを世界に発信する野心的な事業展開を進め、PANDORAはVTuberとリアルタレントの融合という新しいコンセプト「XTuber」を提唱しています。両社とも日本の強みであるコンテンツ産業の可能性を追求し、グローバル展開を視野に入れた成長戦略を描いている点が特徴的です。今週の資金調達は、デット・エクイティ合わせて総額約42億円規模となり、各分野でのイノベーションが活発化していることを示しています。
「Plus Web3」では、今後も資金調達例を紹介してまいります。