【Week : 5/12-5/16】シェア別荘サービスや2.5次元IPプラットフォームが大型調達 スタートアップ資金調達リサーチ

5月も中旬に入り、引き続き様々な分野で活躍するスタートアップ企業が資金調達を発表しました。
この記事では、5月12日から5月16日の間にリリースされた、スタートアップの資金調達ニュースをまとめています。さらに、事業内容、調達金額、今後の展望についても詳しく解説します。
サブスクリプションでのシェア別荘サービスを提供するSANU、64.5億円の資金調達を実施
事業内容: 国内最大級のシェア別荘サービス「SANU 2nd Home」の提供
調達金額: 64.5億円(エクイティ35億円、サステナビリティローン19.5億円、ソーシャルローン10億円)
引受先:グロービス・キャピタル・パートナーズ(リード)、ゆうちょ Spiral Regional Innovation Fund、全国保証イノベーションファンド、JAFCO、みずほ銀行(アレンジャー)、りそな銀行、足利銀行、京葉銀行、日本政策金融公庫、山梨中央銀行
今後の展望: 全国100拠点体制への事業拡大、木造モジュール建築のアップデート並びに量産体制構築、ソフトウェアテクノロジーを活用したオペレーティングシステムの開発
SANUは、「Live with Nature / 自然と共に生きる。」をミッションに掲げ、シェア別荘サービス「SANU 2nd Home」を提供しています。従来、自然との暮らしは「個人で1軒丸ごと別荘所有」または「地方移住」という選択肢に限られていましたが、SANUはサブスクリプションや共同所有など柔軟なモデルを通じて、都市居住者が自然と継続的につながる新たなライフスタイルを提案しています。現在、31拠点・189室を運営しており、環境共生型のオリジナル建築を通じて自然資本の適切な活用・循環・再生を目指しています。
同社の調査によると、都市居住者の約3人に1人(推計700万人)が「都市に居住しながら、自然と継続的につながる暮らし」に関心を持っているとのこと。そうした需要に合わせ、SANUの提供する「SANU 2nd Home」では、個人向けのゲスト宿泊やサブスクリプション、法人向けサブスクリプション、共同オーナー型セカンドホームサービスなど、ライフスタイルに合わせた多様な選択肢を用意しています。また、環境に配慮した開発・建築・運営を特徴とし、国産材活用・植樹・廃材活用、環境負荷の少ない基礎杭工法や再生エネルギーの活用など、サーキュラー建築の実現にも取り組んでいます。

2.5次元IPのプロデュースを展開するウタイテ、77億円の資金調達を実施
事業内容: 2.5次元IP開発、運営
調達金額: 77億円
引受先: テンセント、日本政策投資銀行、SBVA、JPインベストメント、かんぽNEXTパートナーズ、SMBC日興証券、TBSイノベーション・パートナーズ、静岡キャピタル、セガサミーホールディングス、松竹ベンチャーズ、Yostar、Sony Innovation Fund、Tycoon Capital、グロービス・キャピタル・パートナーズ、Z Venture Capital、ごうぎんSkyland Next Fund、DIMENSION、MIXI、三菱UFJキャピタル、前澤ファンド、電通ベンチャーズ、Bandai Namco Entertainment 021 Fund、BRICKS FUND TOKYO、北國銀行、静岡銀行、三井住友銀行
今後の展望: 優秀な人材の確保と組織体制の強化、海外市場への展開加速、エンターテインメントの可能性拡大
ウタイテは、2022年12月設立のエンターテイメント企業です。主に2.5次元IPの開発、運営といったエンターテイメント領域で事業活動を行い、「心が躍る感動を、世界へ。」というミッションのもと、日本に新たな「エンタメ経済圏」を確立し、グローバル展開を目指しています。2.5次元とは、アニメや漫画などの二次元コンテンツと、実写や舞台などの三次元コンテンツの中間に位置する形式で、ウタイテはこの領域で強固なアーティスト支援プラットフォームを構築しています。
今回の資金調達では日本独自の文化である2.5次元IPの更なる拡大に向け、国内外の投資家との関係構築に着手。特に、グローバルトップクラスのエンターテイメント投資家であるテンセントをリード投資家に迎え、SBVAからの日本初となる出資を受けるなど、海外展開への布石も着実に打っています。複数回のM&A Exitを経験した実績のある経営陣と、2次元および2.5次元領域において第一線で活躍してきたコアメンバーのマネジメント経験を生かし、コンテンツ展開をしていく方針です。

統合コマースプラットフォーム「ecforce」を提供するSUPER STUDIO、コマースDXの支援拡大に向け追加資金調達を実施
事業内容: 統合コマースプラットフォーム「ecforce」の開発・提供、D2C事業
調達金額: 約17億円
引受先: 三井不動産・グローバル・ブレインが共同運営する「31VENTURES-グローバル・ブレイン-グロースI事業」、ALL STAR SAAS FUND、きらぼしキャピタルなど
今後の展望: プロダクト開発や採用の強化、エンタープライズ企業を中心とした顧客獲得のためのセールス・マーケティング活動の推進
SUPER STUDIOは、コマースDXを実現する統合コマースプラットフォーム「ecforce」を提供するスタートアップです。2023年の追加資金調達を機にオフライン市場への進出を進め、三井不動産との共同事業として次世代型ショップ「THE [ ] STORE(ザ・ストア)」をオープンするなど、コマース事業者のオフライン進出を支援してきました。さらに、EC・店舗の顧客データ基盤を構築するシステム「ecforce cdp」、データの可視化・分析を行うダッシュボードツール「ecforce bi」、効率的且つ効果的なCRM施策を実行可能なMAツール「ecforce ma」などのプロダクト開発も進め、オンライン・オフラインのシームレスなデータの統合管理・分析・活用を実現しています。
コマース領域のDXは、多種多様なツールが存在するものの、十分なツール・データ活用の知見や専門性を持ったデータ利活用がなされていないという課題があります。SUPER STUDIOはこの課題を解決するため、コマース基盤とデータ基盤が連動する統合コマースプラットフォーム「ecforce」を通じて、EC・店舗両者の販売チャネルの構築や環境の提供と、各販売チャネルの顧客データをアジャイルに利活用できるプロダクト・サービスを強化。エンタープライズ企業からSMB企業まであらゆるコマース事業者が、自社のビジネスに合わせて事業成長できる基盤を構築し、消費者のニーズや行動パターンの多様化、市場環境の変化に迅速に対応しながら成長できるようなコマースDXの実現を目指しています。

宿泊施設向けDXを推進するTabist、16.5億円の資金調達を実施
事業内容: 宿泊・観光産業のDX推進、Tabistブランドの開発・運営・管理、宿泊施設のDX推進
調達金額: 16.5億円)
引受先: 小樽グリーンホテル、トーショウコーポレーション、betaspace、渋谷建設、SBIインベストメント、みずほキャピタル、ひろぎんキャピタルパートナーズ
今後の展望: AI・DX商材の開発強化、ブランド・マーケティング強化、フラッグシップ展開の加速
Tabistは、宿泊施設に特化した宿泊管理システムやダイナミック・プライシング機能を提供し、観光業界全体のDXを推進するスタートアップです。ホスピタリティ産業では、恩恵が都市部に集中しており、多くの地域の宿泊施設では依然として売上最大化と業務効率化の両立が課題となっています。Tabistは、OTA(オンライン・トラベル・エージェント)運用の最適化やTabist独自のウェブサイト・アプリの運用に加え、宿泊現場で活用できるAI(人工知能)・DX商材の開発を推進し、限られた人員でも高効率な運営が可能な体制の構築を目指しています。
Tabistはミレニアル世代を中心とした新たな顧客層の開拓や、地域に根差したブランド展開を通じて、宿泊施設・ゲスト・地域コミュニティがつながる新しい旅のかたちを創出しています。中小の宿泊施設を中心にダイナミック・プライシングや宿泊予約管理システムの提供を通じたDX支援を行うことで、人手不足の課題を抱える宿泊施設の課題解決を推進しています。また、ゲスト宿泊やライフスタイルに合わせた柔軟なプランを提供することで、近年の働き方の変化や観光ニーズの多様化にも対応。今回の資金調達により、テクノロジーとマーケティングの力を通じて宿泊業界の課題解決と持続可能な価値の提供を加速させる計画です。

一人向けコンパクトモビリティを提供するKGモーターズ、13.9億円の資金調達を完了
事業内容: 超小型モビリティロボットの製造・販売、MaaS事業
調達金額: 13.9億円
引受先: 環境エネルギー投資、ドーガン、池森ベンチャーサポート、いよぎんキャピタル、waypoint venture partners、戸畑製作所/戸畑グループ、三井住友銀行、みずほ銀行、日本政策金融公庫、キーレックス(社債引受)
今後の展望: 2025年10月の量産開始に向けた初期ロットの量産試作・部材調達、量産のための設備投資、生産体制・品質管理体制の整備、マーケティングおよびブランド認知拡大施策
KGモーターズは、1人乗り小型モビリティロボット「mibot」の開発・製造・販売を行うスタートアップです。「mibot」は持続可能な移動を楽しく、快適に実現することを目指して開発された1人乗りの小型EVで、レトロかつ未来的なデザイン、高い安全性、ドア・エアコン付きの快適性、そして維持コストの低さを兼ね備えたエネルギー効率に優れた次世代モビリティです。最高速度60km/h、航続距離100km(30km/h定地走行テスト値)を実現し、2024年8月の予約開始以降、現在までに個人・法人合わせて累計2,200台超の予約を獲得しています。
当初は個人向けを中心に展開していましたが、2025年1月から法人向けの本格展開を開始し、わずか数か月で法人予約は400件超に達するなど、業務用モビリティとしての関心も高まっています。法人からの申し込みは、営業・点検・巡回など1人での近距離移動を日常的に行う業務を中心に広がっており、コンパクトさ・経済性・管理のしやすさが評価されています。限られた駐車スペース、高騰する車両維持コスト、環境配慮への要請といった制約条件の中で、「1人乗りで十分な業務に、最適な選択肢」として注目されています。今回調達した資金は、量産工場「Mibot Core Factory(MCF)」での初期設備導入を中心に活用し、2025年10月の量産開始に向けた実行体制の構築を本格化していきます。

まとめ
5月12日から5月16日のスタートアップ資金調達例をまとめました。
今週の資金調達ニュースからは、多様な分野での大型資金調達が目立ちました。特に、SANUの64.5億円、ウタイテの77億円という大型調達が実現しており、投資家からの信頼と期待の高さが窺えます。これらの企業はデジタル技術の提供にとどまらず、「自然との共生」や「2.5次元IP」という日本の強みを活かした独自の領域で事業展開している点が特徴的です。
サステナビリティとDXの融合が進んでいることも今週の大きな特徴と言えるでしょう。SANUのサステナビリティローンを活用した環境共生型の事業展開、KGモーターズのエネルギー効率に優れた小型モビリティなど、環境配慮と新技術を組み合わせたビジネスモデルは投資家からの評価が高いです。
また、TabistやSUPER STUDIOなどDX支援企業の資金調達も順調で、特に既存産業(宿泊業、小売業)のデジタル化支援を行う企業への投資が活発になっています。こうした動きは、持続可能な社会の実現と経済成長の両立を目指す、次世代のスタートアップの方向性を示しています。
「Plus Web3」では、今後も資金調達例を紹介してまいります。