2026年10月30日、国内のデジタル庁は、政府職員向け生成AI環境「ガバメントAI 源内」の利用状況アンケート調査(第1回)の結果を公表した。回答者の71.7%が満足と評価し、54.4%が週1時間以上の業務時間短縮を実感した。一方、利用の定着や回答精度の改善が課題として浮かび上がった。
政府職員のAI活用で週平均約110分の業務時間を削減
デジタル庁は今年度、政府職員18万人を対象に、生成AI環境「源内」の大規模実証を進めている。今回のアンケートは、源内を利用する各府省庁などの職員を対象に実施され、6,439人から回答を得た。調査では、利用者の71.7%が源内に「満足」と回答し、導入した業務において54.4%が週1時間以上の業務時間短縮を実感していることが明らかになった。
業務時間の削減効果は、利用者1人当たり週平均約1.83時間、約110分と推計される。この数値は、時間の増減に関する回答を一定の基準で換算したものであり、実測値ではなくアンケートに基づく推計である。回答の範囲に応じて中央値を採用し、上限のない回答には保守的な数値を設定するなど、算出方法も明示されている。
注目したいのは、単純な作業時間の短縮だけでなく、業務の質にも変化が生じている点だ。職員からは、源内によって節約できた時間を、より踏み込んだ検討や従来は対応できなかった業務に充てられるようになったとの声が寄せられた。AIによる効率化が、行政職員の業務を単に減らすだけでなく、付加価値の高い仕事へ振り向ける効果も示している。
一方、AIの回答精度や信頼性が不十分であることや、具体的な使い方が分からないといった課題も判明した。満足度の高さだけでは測れない、実務への定着に向けた改善余地も残されている。
源内の全庁的な活用を推進 AI格差と業務負担の増加が課題に
デジタル庁は今回の結果を踏まえ、源内の機能改善と利用定着を並行して進める方針だ。まず、2026年10月20日から提供を開始したAIエージェント利用環境を通じ、回答精度やファイルの入出力など、職員から寄せられた要望への対応を進める。さらに、職員が作成したスキルやデータを組織横断的に共有できる「源内ライブラリ」を年度内に提供する予定であり、優れた活用事例やプロンプトの共有によって、各府省庁への利用拡大を目指す。
ただし、利用率の底上げは避けて通れない課題である。今回の調査では、回答者の31.2%が源内をほとんど、または全く利用していないと回答した。業務上の制約だけでなく、利用するきっかけや具体的な方法を知らないことも背景にあると考えられる。デジタル庁は基本的な使い方の研修などを通じ、利用頻度の低い職員への支援を強化する構えだ。
一方、AIの普及が必ずしも職員の負担軽減につながるとは限らない。AIを使える職員に業務が集中し、利用しない職員の仕事まで引き受けることになれば、かえって負担が増す可能性がある。また、AIが大量に生成する回答の確認や修正に時間を取られる懸念も残る。このため、回答の根拠を確認しやすい仕組みやデータセットの整備に加え、適切な利用方法を定めたガバナンス基準の周知も進める。
政府が率先してAI活用を推進することは、行政の生産性向上にとどまらず、日本全体のAI利活用を後押しする契機となりうる。今後は利用率だけでなく、業務の質や職員の負担がどう変化したかが重要になる。デジタル庁は2027年1月頃に第2回調査を実施し、AIエージェント導入後の変化も含めて大規模実証の成果を総括する予定だ。政府のAI導入が一過性の効率化に終わらず、持続的な行政改革につながるかが問われる。