米AI企業Anthropicは、Claudeが量子回路をほぼ自律的に設計し、従来の最良水準を上回る成果を得たと発表した。
楕円曲線の点加算では、量子ビット数を12%増やす一方、必要なゲート数を17分の1に削減した。
53時間の探索で新たな可逆計算方式を開発
2026年10月16日、AnthropicはClaudeを活用した量子回路の自律設計に関する研究成果を発表した。
研究チームは、化学、最適化、物理シミュレーション、数論などに関する8種類の量子回路設計をClaudeに依頼した。
自然言語で仕様を伝え、提案された回路の正しさと計算資源を評価するプログラムを用意。Claudeが設計、評価、修正を繰り返す仕組みを構築した。
量子コンピューターは、量子ビットの数や計算時間に制約がある。
量子回路には可逆性(※)が必要で、途中の情報を自由に消せない。そのため、計算履歴の保存や不要な情報を消す処理が回路の負担となる。
Claude Mythos 5が取り組んだ課題の一つは、楕円曲線上の二つの点から別の点を求める「点加算」だ。
この演算に必要なモジュラー逆元計算は、量子ビットとゲートを大量に消費する。従来の「divsteps」では分岐履歴の保存に多数の量子ビットが必要だった。
Claudeは約53時間にわたり、最小限の人間の介入の下で探索した。
その過程で、演算後の数値から分岐情報を復元する方法を考案し、新たな代数的関係式を導出。
大規模な数値シミュレーションとLeanによる形式化を経て、分岐履歴をすべて保存しない可逆的なdivstepsを実装した。
新設計の一つは、従来の最小規模の回路と比べて量子ビット数が12%増えるものの、ゲート数を17分の1に削減した。
また、量子最適化アルゴリズム「DQI」の復号回路でも計算方式と一時情報の保存方法を見直し、Googleが以前に構築した回路に比べ、ゲート数を12分の1に抑えた。
※可逆性:計算結果から計算前の状態へ戻せる性質。量子回路では中間情報を単純に破棄できないため、保存したり、計算を逆向きに実行して不要な情報を消したりする必要がある。こうした処理も計算資源を消費する。
量子計算の実用化加速に期待、実機への適用は課題
今回の成果は、量子計算の進展が量子ビットの増設だけに依存しないことを示唆する。
計算手順を根本から見直し、限られた資源でより複雑な処理を実行できれば、化学反応の解析や新材料の探索など、実用的な用途に近づく可能性がある。
特に、AIが評価結果を受けて自ら設計を改善する方法は、試行錯誤の多い研究開発との相性がよい。
人間が課題や評価基準を定め、AIが多様な候補を探索する分業が進めば、回路設計の効率化につながるだろう。
将来的には、誤り訂正や装置の制御まで含めた総合的な最適化も視野に入る。
一方、ゲート数が17分の1になっても、実機の処理時間が同じ割合で短くなるとは限らない。
量子ビット数との兼ね合いに加え、ノイズや誤り訂正の負担も性能を左右する。
また、評価しやすい課題での成功が、あらゆる量子アルゴリズムに通用する保証もない。
今後は、設計の正しさと資源削減効果を幅広い条件で検証し、実際の装置でどれだけ利益を得られるかが焦点となりそうだ。
AIによる回路最適化を実用化へつなげるには、理論、ソフトウェア、ハードウェアの連携が不可欠と言える。
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