2026年10月14日までに、国内のリコージャパンは、大阪厚生信用金庫でオンプレミス型生成AI基盤「RICOH オンプレLLMスターターキット」のエントリーモデルの導入検証を実施したと発表した。生成AIアプリケーション開発基盤「Dify」を活用し、社内問い合わせ業務の効率化や回答品質の向上を確認。機密情報を扱う金融機関での実用化に向け、セキュリティと業務効率の両立を目指す。
オンプレミス環境で社内問い合わせを自動化
今回の検証は2026年2月から3月にかけて、大阪厚生信用金庫の事務部システム課における事務規定マニュアル関連の問い合わせ業務を対象に実施された。金融機関は顧客情報や取引情報などの機密データを扱うため、生成AIの導入では情報管理やデータガバナンスへの対応が課題となる。クラウド型サービスの利用に慎重な姿勢もあり、組織内でデータを管理できるオンプレミス環境への関心が高まっている。
検証に用いたエントリーモデルは、エフサステクノロジーズの「Private AI Platform on PRIMERGY(Very Smallモデル)」に、リコーの大規模言語モデル(LLM)を搭載したものだ。Difyがあらかじめ導入されており、社内規程集や業務マニュアル、FAQなどを活用したナレッジ検索・回答生成の仕組みを構築できる。金融機関が求めるセキュリティ要件への適合性や、顧客環境での動作、回答生成性能に加え、ハンズオンセミナーを通じて利用者自身がAIアプリケーションを作成できるかも検証した。その結果、ナレッジ活用の促進や回答品質の向上といった効果を確認した。
※オンプレミス:サーバーやシステムを自社施設などの管理下に設置し、運用する方式。データを組織内で管理しやすい一方、環境の構築や運用管理が必要となる。
金融AIの普及に期待 運用管理と精度が課題に
今回の検証は、機密情報を扱う金融機関でも、管理環境を整えることで生成AIを業務に活用できる可能性を示した。社内規程や業務マニュアルに関する問い合わせを効率化できれば、職員が情報を探す負担を軽減し、蓄積された知識を組織内で共有しやすくなる。さらに、Difyを使って業務に応じたアプリケーションを作成できれば、問い合わせ対応以外の業務への応用も考えられる。
リコージャパンは今後、オンプレミスAI基盤、リコーLLM、Difyを組み合わせたソリューションの展開を進める方針だ。2026年10月15日、16日開催の「金融国際情報技術展 2026」では、問い合わせ業務を効率化するアプリケーションなど、金融業務向けAIソリューションを展示する予定である。
ただし、導入効果を継続的に得るには、回答の正確性や情報の更新、アクセス権限の管理などにも配慮しなければならない。オンプレミス環境であっても、誤回答や不適切な情報参照のリスクがなくなるわけではないためだ。今後は、セキュリティ要件への適合に加え、運用負担や費用に見合う効果を確保できるかが、金融機関への普及を左右すると考えられる。