2026年7月9日、日立製作所の米国子会社であるHitachi Digital Servicesは、米ServiceNowとの提携を発表した。AIを活用したインフラ監視ソリューション「Hitachi Intelligent Infrastructure Monitoring(HIIM)」を高度化し、エネルギー、製造、モビリティなどのミッションクリティカル領域で、リアルタイム監視から自動対応までを統合する運用基盤の構築を目指す。
AIで現場と企業システムを接続
今回の提携では、Hitachi Digital Servicesが持つOT(制御・運用技術)(※)分野の知見と、ServiceNow AI Platformのワークフロー自動化機能を連携させる。HIIMは、映像、熱画像、IoTセンサー、高度な分析データを統合し、インフラの状態を継続的に可視化する仕組みである。
さらに、ServiceNowのWorkflow Data FabricやAI駆動型ワークフローと組み合わせることで、単なる監視にとどまらず、自動化されたアクションの実行まで可能にする。
これにより、断片化した複数システムからリアルタイムでデータを収集し、問題の検知、優先順位付け、対応を迅速化できるようになる。
背景には、重要インフラ事業者が直面する労働力不足や運用負荷の増大がある。エネルギー、モビリティ、製造業では、安全性と信頼性を維持しながら、複数のサイロ化したデータソースを横断的に活用する必要性が高まっていた。
ServiceNowのChris Bedi氏は、「AIで成功する企業は、データをリアルタイムかつ組織横断的に行動へ変換できる企業だ」と述べ、事後対応型から自律的な運用への転換を強調した。
※OT(制御・運用技術):工場設備や電力網、交通システムなどの物理インフラを監視・制御する技術分野。IT(情報技術)と異なり、設備の安全運転やリアルタイム制御を重視する点が特徴である。
自律型インフラ運用への転換点
この提携は、日立が推進する次世代インフラソリューション群「HMAX by Hitachi」のビジョンとも一致する。HMAXは、アセットインテリジェンス、デジタルサービス、ライフサイクル管理を組み合わせ、計画・予測・予防保全を最適化する構想であり、社会インフラの運用をAI主導へ移行させることを目指している。
特に注目されるのは、現場の運用データと企業全体のワークフローを接続し、インサイトを大規模なアクションへ変換できる点だ。従来は監視システムが異常を検知しても、対応判断や部門間連携に時間を要するケースが多かった。AIによる自動化が進めば、障害対応の迅速化や作業員の安全確保、設備停止リスクの低減につながる可能性がある。
一方で、AIによる自律運用の拡大には課題も残る。複数システムを横断するデータ統合には、ガバナンスやセキュリティの確保が不可欠であり、誤検知や自動判断の精度管理も重要となる。特定ベンダーに依存しない設計を採用したHIIMは柔軟性を持つが、実運用では各企業の既存システムとの統合が成否を左右すると考えられる。
インフラ監視が「異常を見つける」段階から「自律的に対処する」段階へ進み始めたことは大きい。AIとワークフロー自動化を組み合わせた今回の取り組みは、重要インフラ運用の新たな標準モデルとなる可能性がある。