2026年7月3日、イディナ株式会社と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、「J-SPARC(※)」の枠組みのもと、「宇宙機の対話認知インターフェース事業」に関する共創活動を開始したと発表した。生成AIや音声技術を活用し、探査機が利用者と自然に対話する新たな仕組みの実現を目指す。
※J-SPARC:JAXAと民間企業が共同で宇宙関連事業の創出を目指す共創プログラム。事業化を視野に技術開発や実証を進め、新たな宇宙ビジネスの創出を支援している。
探査機との対話を実現するAI構想が始動
イディナとJAXAは、対話認知インターフェース「Mission Buddy」を活用し、探査機や人工衛星が自らの“声”で利用者の問いかけに応答する仕組みの概念設計や試作、検証を開始した。
運用者は探査機へ話しかけるように過去の運用データや知見へアクセスできる可能性があり、情報検索時の認知負荷軽減を目指す。また、展示施設では来場者が探査機へ質問すると、現在の飛行状況やミッションの目的を探査機自身が説明する体験も想定している。
今回の共創では、生成AIや音声合成技術に加え、イディナの対話基盤と人格設計基盤を組み合わせることで、ミッションや機体ごとの特性を反映した応答を実現する構想だ。2026〜2027年度にかけてプロトタイプを開発し、JAXA相模原キャンパスの展示施設や実際の運用現場で実証を進める予定としている。
宇宙との距離を縮める一方、AI運用には課題も
探査機が対話相手となれば、専門家だけでなく教育現場や科学館、一般利用者も宇宙ミッションをより身近に感じられるようになる可能性がある。長期運用で蓄積された知見を自然な会話を通じて引き継げるようになれば、技術継承の効率化や研究支援への活用も期待できる。さらに、多言語対応が進めば、日本の宇宙開発を世界へ発信する新たなコミュニケーション手段となる可能性も考えられる。
一方で、探査機が提供する情報には高い正確性と安全性が求められる。生成AIの誤回答や、人格表現によって事実と演出の境界が曖昧になるリスクも想定されるため、回答範囲や権限管理、監修体制の整備が重要になると考えられる。
こうした課題を克服できれば、対話認知インターフェースは宇宙開発にとどまらず、複雑な科学技術情報を分かりやすく伝える基盤として幅広い分野へ展開される可能性がある。人と科学技術の関係をより双方向へ変える可能性を持つ試みとして、今後の成果が注目される。
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